AI技術の進歩がめざましい昨今、画像処理の世界においてもディープラーニングの導入が進んでいます。本記事では、完全無償のディープラーニングモデル学習用GUIツール Deep Learning Toolをベースとした、ディープラーニング画像処理アプリケーションの開発ワークフローについてご紹介します。そして、本記事を読んでディープラーニングの導入に本格的に取り組みたいという方に向けて、無料のオンライン技術トレーニングについてもご案内いたします。
マシンビジョンに変革をもたらすディープラーニングの真価
従来のルールベース画像処理では、画像処理による検査や計測、判断を行う際、どのようにしてその処理を実現するのか、そのルールを定義する必要があります。ですが、例えば食品のように、良品、不良品の形にばらつきがある場合、ルールの定義が困難です。また、そのルールを、画像処理アルゴリズムに落とし込む知識も必要です。
一方、ディープラーニング画像処理であれば、必要になるのは、判断基準を学習するのに十分な画像と、
その画像が何を表しているのかを教示するラベル情報のみです。これらを準備すれば、判断基準を自動的に学習して、ある程度しっかりした判断をしてくれるようになる、というのが、ディープラーニング画像処理です。
ディープラーニング導入ワークフロー
ディープラーニングを画像処理アプリケーションに導入するための全体のワークフローは、下図のようになります。
大きく分けて、「1.モデル学習フェーズ」と、「2.アプリケーション構築フェーズ」に分けることができ、弊社では、各フェーズでご活用いただける画像処理ソフトウェア製品として、HALCON / MERLIC / Deep Learning Toolをご用意しています。
まず、モデル学習フェーズでは、ディープラーニングのモデルを学習するための画像を収集し、ラベル付けを行います。次に、収集した画像を使ってモデルの学習を行った後に、性能の評価を行います。
そして、アプリケーション構築フェーズでは、ディープラーニングを使用した画像処理アプリケーションのアルゴリズムを構築し、最後に、結果の画面表示やボタンの操作などができるGUIアプリケーションを作成します。
ラベル付け、モデルの学習および性能評価までは、完全無償のDeep Learning Toolを、アプリケーションへの実装はHALCONまたはMERLICをご使用いただけます。以降、導入フローにおける各製品の特徴をご紹介していきます。
モデル学習は Deep Learning Tool で完結
Deep Learning Toolはディープラーニングモデル学習に特化した、完全無償のGUIツールです。操作はキーボードおよびマウスだけで、初心者でも扱いやすいものとなっています。
特徴として、AIベースのラベル付け補助機能があります。まず、一般的なラベル付け作業では、ペイントソフトなどを使用して画像上の欠陥をマウスで1枚1枚手作業で塗りつぶしていく必要があり、大きな工数がかかります。一方で、Deep Learning Toolの「ホバー&クリック」機能を使用すると、画像上で欠陥と思われる部分の特徴を自動的に学習し、欠陥としてラベル付けしたい部分にマウスカーソルを重ねるだけで、効率的にラベル付け作業を行うことができます。
つぎに、モデルの学習を行います。ディープラーニングでは、高い判定精度を得るために、いくつかパラメータをチューニングする必要がありますが、どのパラメータをどのように調整するかについては、ユーザに専門的な知識が求められてきました。Deep Learning Toolでは、パラメータの種類はマシンビジョンアプリケーションで特に必要とされるもののみが準備されているため、ディープラーニングに関する専門的な知識は不要です。さらに、パラメータの活用方法に関する基礎知識やヒントをまとめたドキュメントも完備していますので、すぐに良好な結果を得ることができます。
学習のためのパラメータ調整は最小限 | 調整のためのノウハウも |
最後に、モデルの性能評価を行います。Deep Learning Toolでは、精度評価に特価した専用の指標でモデルの性能を定量的に評価する方法を複数準備しています。たとえば、多少のオーバーキルがあっても、不良品を流出させたくない、といった検査の場合には、判定結果のもっともらしさを表す信頼度という値に対してしきい値処理を適用することで、判定率を調整することもできます。
また、これまで、ディープラーニング画像処理は判定結果が正しくても、その根拠がブラックボックスになっており、検査工程への導入が難しいという課題がありました。しかし、Deep Learning Toolでは、ヒートマップ機能によりディープラーニング画像処理の判断根拠を可視化することもできます。
OK/NGの判定を対話的に調整可能 結果を確認しながら効率的に判定基準を調整 | ヒートマップで判定結果の根拠を可視化 ディープラーニングのブラックボックス性を解消 |
学習が完了したディープラーニングモデルは、ファイルとしてエクスポートすることができます。こちらのモデルをHALCONやMERLICに読み込んで使用します。
Deep Learning Tool ダウンロードはこちら |
学習済みモデルと HALCON / MERLIC でアプリケーション構築
ディープラーニング画像処理を使用したアプリケーションの構築には、画像処理ライブラリHALCONまたはプログラミング不要の画像処理ソフトウェアMERLICを使用します。
HALCONは、ディープラーニングのみならず、2,000を超える関数をもつ画像処理ライブラリですので、一つのプラットフォームでルールベース処理と組み合わせることで、高度な画像処理アプリケーションを実現可能です。アプリケーション化の方法は、VisualStudioなどの開発環境上でGUIの作成や、ボタン操作などの部分を実装します。
図. HALCONによるルールベース処理とディープラーニングの融合
HALCON 製品紹介はこちら |
MERLICを使用してアプリケーション開発を行う流れについては、ディープラーニングモデルをDeep Learning Toolで作成して、それを読み込んで利用するところはHALCONと同じです。一方で、MERLICでは、画面周りや外部機器とのインターフェースまでMERLIC上で実装できますので、Visual Studioを使うことなく、簡単にディープラーニングアプリケーションを構築できます。
図. MERLICを用いたプログラミング不要の画像処理アプリケーション構築
MERLIC 製品紹介はこちら |
いつでも無料で視聴可能なオンライン技術トレーニング動画を公開中
本記事ではご紹介しきれなかったHALCON / MERLIC / Deep Learning Toolの具体的な使用方法は、無料のトレーニング動画サイトを通してより深く解説しております。こちらのプレイリストの動画を順番にご視聴いただくだけで、HALCON、MERLIC、Deep Learning Toolを活用したディープラーニング画像処理アプリケーションの開発手法を習得することができます。配信形式はオンデマンドですので、お好きなタイミングでいつでもご視聴いただけます。
プレイリストはこちら |
弊社では、画像データをご送付いただければ、無償で技術評価を行っております。この機会に、ぜひ画像処理アプリケーションにディープラーニングの導入をご検討ください。
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