近年、電気自動車の利用拡大によって、バッテリーの需要が急増しています。バッテリーの製造工程には、数多くの部品や素材が関わっており、それらの中で不良品を見つけることは膨大な工数がかかります。このような品質管理において、画像処理技術による検査の自動化が求められています。今回紹介するのは、MVTec社の画像処理ソフトウェア「HALCON」の画像検査機能です。HALCONは、2,000個を超える膨大な関数を提供する画像処理ライブラリであり、様々な産業分野で活躍しています。
図:バッテリーの製造工程とHALCONの活用ポイント
バッテリー製造工程で求められる検査機能
電極の検査
バッテリーの製造工程において、電極部品がすべての元となります。電極に不良があると、バッテリー自体の品質が低下し、使用寿命も短くなるため、厳密な検査が必須です。HALCONが提供する画像検査の機能を活用すると、例えば、カットの工程に対しては高精度な計測機能を適用することができます。カット時の精度不良によって寸法に不良があったとしても、1/50ピクセルの精度で高精度に対象物の大きさを計測することが可能です。
電池組立工程の検査
電極は単体ではバッテリーとしては動作せず、電極のアセンブリという工程が必要です。電極を複数の層に重ね合わせていくアセンブリ方法である積層式では、電極の方向と位置が正しい位置で設置されているかどうかが重要になります。HALCONは、高精度かつ高速に対象物のアライメントを行うためのパターンマッチング機能を提供しています。遮蔽物によって対象物が隠れてしまったり、低コントラスト・高ノイズな画像に対しても高速かつロバストな結果が得られます。
また、アセンブリ後のバッテリーはトレーサビリティを目的として製造番号やバーコードが印字される場合があります。HALCONは、ディープラーニングの技術を取り入れた文字認識(DeepOCR)やバーコード読み取りの機能を提供しています。
DeepOCRは乱雑な背景上にある文字や特殊なフォントであっても安定した読み取りが可能です。
また、欠陥を含む低品質なバーコードはもちろん、円弧に歪んだバーコードに対しても豊富な前処理との組み合わせによって高速かつロバストな読み取り性能を発揮します。
バッテリー表面の検査
アセンブリされた電極は、その後、配線や絶縁材料など他の部品と一緒に、バッテリーセルと呼ばれる筐体に組み込まれます。バッテリーセルの種類は大きく分けて、缶型、円筒型、袋(パウチ)型に分類されます。バッテリーセルの表面に発生する傷や汚れは、バッテリーの性能や寿命に悪影響を与える可能性があるため、適切に検査を行う必要があります。こういった欠陥は色や形状、大きさが不均一であるため、ディープラーニング機能が役に立ちます。さらに、HALCONはディープラーニング機能とルールベース処理を同じプラットフォームで開発することができます。これにより、例えばディープラーニングのセマンティックセグメンテーションで抽出した欠陥を、面積値や大きさの情報を用いて、大きな欠陥のみを不良とするアプリケーションとして構築することも可能です。
画像処理ライブラリならではのシステム構築
3Dセンサとの組み合わせ
バッテリーの検査では、シーリングによる溝や傾斜、表面の均一性といった、距離の情報が必要とされる検査項目も存在します。製品の生産工程では、歩留まりを向上させることも重要な観点です。例えば、外観検査においてキズの有無の発見だけではなく、その深さを計測することによって、浅いものであればリペアを行い良品として再利用する、といったことを行います。また、バッテリーセルをHALCONは2次元の情報だけでなく、3Dセンサから取り込んだ高さ情報を扱うことも可能です。
検査結果の上位システムとの連携
昨今の製品の製造工程において、IIoT、DXを実現するために、大型のものから小型のものまで、あらゆる装置をネットワークにつなげることが求められます。もちろん、画像検査システムにおいても、検査結果をPLCに送信し、SCADAなど上位のシステムで集約管理する、といった運用が求められていきます。HALCONはPC上で動作する画像処理ライブラリですので、画像検査装置と比較して柔軟なシステム構築が可能です。例えば、検査結果に加えて時刻など必要な情報をユーザーが自由に準備することができますし、OPC UAやソケット通信など様々な外部インタフェースも備えています。
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