日頃、画像処理ライブラリHALCONをご利用いただき、ありがとうございます。
本号では、産業用AI検査に求められる精度と実用性、そしてその開発を支えるDeep Learning Toolの活用法について、HALCONのAI機能を通してご紹介します。

産業用AI検査に求められる「精度」と「実用性」
昨今、人手不足や人件費の高騰を背景に、多くの企業がAIによる自動検査の導入を検討しています。しかし、AI検査に本当に求められているのは、単に「簡単に使える」ことではなく、目視検査を超える高精度な判定能力と安定した運用です。HALCONのディープラーニングは、この点に一貫して注力してきました。
その実現を支える強みの一つが、豊富な産業画像データの活用です。HALCONは30年以上にわたる産業用画像処理の経験で蓄積した膨大な画像データを活用し、プレトレーニング済みのモデルを提供しています。これにより、オープンソースのディープラーニングと比較して、少ない学習画像でも高精度な判定を実現できます。
「少ない画像で簡単に」だけでは通用しない現実
近年は数枚の画像で手軽にAI検査を始められるソフトも増えています。導入のハードルは下がる一方で、画像枚数が少ないと学習できる特徴量が限られるため、誤検出や見逃しが増えやすく、高精度な判定を安定して維持することは容易ではありません。
特に産業用途では、ロット間のばらつきや生産設備の経時変化にどこまで対応できるかが重要です。この「学習させていない画像に対する判定性能」は汎化性能と呼ばれ、現場での運用には”簡単さ”だけでなく「確実な精度」と「安定性」が欠かせません。

理想と現実のギャップを埋めるアプローチ
少ない学習画像でも高精度を実現するという理想に向けて、HALCONの開発元であるMVTec Software社は技術開発を止めることなく挑戦し続けています。しかし、数枚の画像だけで目視検査を超える精度を安定して出すことは、現段階では容易ではありません。
だからこそHALCONは、適切な学習データと豊富な機能を組み合わせ、現場で確実に成果を出す「実践的なAI検査」を提案しています。
- ルールベース画像処理とのシームレスな併用
- 豊富な検査機能(画像分類、オブジェクト検出、セグメンテーション、アノマリー検出など)
- HDevelop EVOやDeep LearningToolなど開発環境の充実
- 技術サポートやオンデマンドトレーニング、ナレッジなどによる手厚い運用支援
AI検査の開発を効率化する「Deep Learning Tool」
この高精度なAI検査を、現場でスムーズに実現するために欠かせないのが「Deep Learning Tool」です。

なぜDeep Learning Toolが必要なのか
Deep Learning Toolは、HALCON上で使用するAIモデルを、GUIベースで簡単に開発できるディープラーニング支援ツールです。プログラムベースでもHALCONの開発環境でAIモデル開発は可能ですが、教師データ作成のためのアノテーション作業、学習パラメータの設定、モデルの性能評価をすべてプログラムベースで行うには、どうしても開発工数がかかります。
そこで、Deep Learning Toolを使用することで、これらの作業を効率化し、AIモデル開発をスムーズに進めることが可能になります。
作成したAIモデルは、HALCONから関数で呼び出すだけで利用できるため、HALCON利用者であれば誰でも容易にディープラーニングを導入できます。
アプリケーション運用開始後も、ワークの色味変化や分類クラスの追加が発生した際、現場で柔軟にモデルを再作成できる点も大きな強みです。

また、Deep Learning ToolはHALCONの開発環境がなくても、AIモデル作成から性能評価までを行えるため、HALCONディープラーニングの実力を無料ですぐに試すことができます。
Deep Learning Toolの対応機能
Deep Learning Toolは、HALCONに搭載されているアノマリー検出やDeep OCR(文字認識)など、多くのディープラーニング機能に対応しています。
HALCONの進化にあわせて、Deep Learning Toolは半年ごとに新バージョンをリリースしていますので、今後のアップデートにもご期待ください。

Free版とProfessional版の違い
Deep Learning Tool 25.04以降、従来のFree版に加えて、バージョン固定・商業利用可能な「Professional版」がリリースされています。

バージョン固定
Free版は各バージョンに約1年〜1年半の有効期限があり、バージョンを固定できません。研究開発用途では最新版を使い続ければFree版でも十分ですが、量産用途ではバージョンの変化によって判定結果が変わる可能性があるため、バージョンを固定できるProfessional版が適しています。
また、開発環境のHALCONとDeep Learning Tool内部のHALCONのバージョンが異なると、一部機能が使えなかったり判定結果が変わったりすることがあるため、開発環境に合わせた安定運用のためにもProfessional版が有効です。
Deep Learning ToolとHALCONのバージョン対応表とFree版の有効期限
再販売の許可
Professional版では、Deep Learning Toolの再販売が許可されており、装置に組み込んで販売することが可能です。ユーザー自身がAIモデルを作成・更新できるようになるため、開発者にとって手離れの良い装置開発を実現できます。
使い分けの目安
研究開発・初期検討にはFree版、商用利用・量産導入にはProfessional版がおすすめです。
なお、Deep Learning Toolが必要なのはAIモデルを作成する設備のみです。開発環境側でAIモデルを都度作成して現場に展開する場合、現場設備にDeep Learning Toolは不要ですが、現場でモデルを作成する場合は、その設備ごとにDeep Learning Toolが必要になります。
精度と開発しやすさを両立するHALCONディープラーニング
HALCONのディープラーニングは、豊富な産業画像データによるプレトレーニング済みモデルを基盤に、「確実な精度」と「安定性」を重視した実践的なAI検査を実現しています。そして、その開発を支えるDeep Learning Toolによって、専門知識がなくても誰もが手軽にAIモデル開発に挑戦できる環境が整っています。
検査領域にとどまらず、文字認識や3Dグリッピング、3Dマッチングなど幅広い用途に広がるHALCONのディープラーニングを、ぜひこの機会にご活用ください。
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