3次元センサーGocatorは形状取得だけではなく、多彩な画像処理機能を標準搭載している点が大きな特長です。その数は100種類以上にのぼり、製造業をはじめとするさまざまな現場での品質検査や工程管理に幅広く利用されています。
本号では、その中でも「まだあまり知られていないものの、実務で非常に便利な画像処理機能」に焦点を当て、具体的なユースケースとともに計測ツールの一部をご紹介します。
既にGocatorを利用中の方も、これから検討される方も、検査自動化のヒントとしてお役立てください。
また、Gocatorの計測ツールは無料のオフラインソフトウェア上でも利用できます。実際に機能を試してみたい方は、ページ下部にある無償『トライアルキット』を是非お試しください。
欠陥検出にも使える!Gocatorの便利ツール
Gocatorの最大の特長は、センサーヘッド自体に「撮像」機能に加えて、良否判定を可能にする計測ツールやPLCとの直接通信機能を内蔵している点です。これにより外付けコントローラーが不要となり、シンプルかつ低コストで高機能な検査・計測システムを構築できます。計測ツールの追加・編集もマウスで直観的に操作できるインターフェースで、プログラミング経験がなくても容易にインライン検査処理が構築できます。
例えば平面補正やブロブ処理を組み合わせることで、製品表面に見られる打痕や異物を検出する「欠陥検査」にも活用できます。その一例として円筒部品上の凹み検出にGocatorを適用した例をご紹介します。
便利ツール①:曲面補正ツール
写真のような円筒部品の表面に見られる凹み検出の例です。回転させながら撮影する方法も考えられますが、設備やタクトタイムの制限から、真上から撮影するケースも多くあります。
このような場合、2Dカメラだと表面の曲率により照明の反射がまばらになり、画像全体のコントラストや明暗が均一でなくなるため、安定した検査ができません。
また3D画像の場合も、(A)のようにワーク全体が大きく湾曲していると、単純な高さ閾値では「うねり」自体が高さ変化として現れてしまうため、欠陥が抽出できません。微小な異物や打痕を確実に抽出するには、より高度な前処理が必要です。
複雑な曲面も一発自動補正
このような複雑な曲面上の検査に有効なのが「曲率ツール」です。曲率ツールは、表面全体の形状を保ちながら、大きな曲面形状(A) を平面形状(B) に変換することができる高機能な画像処理ツールです。
曲率ツールは、元の3Dデータを「なめらかに近似」する曲面を自動で生成した後、元データと近似曲面との高さ(Z値)の差分を算出します。大きなうねりを除去し、異物や打痕といった局所的な凹凸のみが際立つ「平坦化データ」を取得することができます。
このように、曲率ツールは高精度な外観検査の土台を作る前処理機能として、非常に重要な役割を担います。
便利ツール②:ブロブツール
3次元データの曲面形状(A) から平面形状(B) への変換(平坦化処理)を行ったあとは、高さ情報を用いた2値化処理で「凹部のみを検出する」といった欠陥検出が可能になります。この処理を実現するのが「ブロブツール」です。
打痕・異物検出も1ツールで完結
ブロブツールでは、主に以下の2つの閾値を用いて対象の判定を行います。
・高さ閾値:Z値が一定以下の領域(例:凹みなど)を検出対象とするための基準
・面積閾値:検出されたブロブ(領域)の広がりが、指定範囲内かどうかを判定する条件
このように、形状の深さと広がりの両方を数値的に管理できるため、微小な異常から明確な欠陥まで、客観的かつ再現性の高い検出を実現できます。
先ほど作成した平坦化データに対して、実際にブロブツールによる検出処理を適用してみましょう。
ここでは以下のような条件で設定を行いました。
・高さ閾値:平坦化面(Z=0)から50um(=0.05mm)以上の深さ
・面積閾値:検出対象の領域が 1mm²以上
この条件に基づき処理を実行した結果、対象となる凹み部分が正確に抽出されていることが確認できます。
2ステップでできる汎用的な欠陥検査
これらの処理を画像処理ソフトウェアで組むと閾値処理、領域分割、面積・形状フィルタといった複数の処理を記述する必要があります。Gocatorではブロブツール1個を追加し、マウス操作でパラメータ調整するだけで検出処理が完結します。
このように、「曲率ツール」による平坦化処理と「ブロブツール」による閾値判定を組み合わせることで、大きな曲面上に見られる小さな凹凸も安定的に検出可能となります。
同じ処理の組み合わせで錠剤表面の欠け検査やパウチ表面の膨らみ検査などにも応用できます。
お使いのPCですぐに試せる『Gocator トライアルキット』
Gocatorの計測ツールの扱いやすさを実感していただくには、実際に触ってみるのが一番の近道です。そのための無償体験キット「Gocatorトライアルキット」を用意しています。Gocator本体がなくてもPCがあればすぐに試せる、計測機能の体験キットです。
いくつかのサンプルがあらかじめセットされており、Gocatorの操作画面と同じインターフェースで、自由に計測ツールを追加・編集することが可能です。計測ツールの操作感をご自身のPCでリアルに体験してみてください。
進化を続けるGocator|新ソフト『GoPxL』でさらに便利に
Gocatorの計測ソフトウェアは、現在も進化を続けています。従来の機能はそのままに、さらなる高機能化と利便性を追求した上位互換ソフト「GoPxL」の提供もすでに開始しています。GoPxLは年内を目処に日本語対応を予定しており、より一層使いやすくリニューアルします。今後のアップデートにどうぞご期待ください。
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