
産業用カメラで広く利用されているGigE Visionの次世代規格「GigE Vision 3.0」が登場しました。Baslerからは、この新規格に対応したace 2シリーズの10GigEカメラが新たに登場します。
GigE Vision 3.0は、これまでのGigE Visionの特長を活かしながら、より高速・大容量な画像転送に対応するための新しい規格です。今回は、GigE Vision 3.0で何が変わるのか、その中心技術であるRDMAと、新しいace 2の10GigE、さらに今後の高速化の方向性までご紹介します。
高速通信で浮き彫りになるGigE Visionの課題
GigE Visionは下図の通り、最大100mの長距離配線や複数台のカメラ接続、システムコストを抑えやすいことなどを強みに、産業用カメラ市場で広く普及しています。
一方、画像取り込み時のCPU負荷の高さやリアルタイム性には、従来から課題がありました。

1GigEでは最大データレートが125MB/sに限られていたため、こうした課題は表面化しにくい状況でした。
しかし近年、高精細・高速撮像へのニーズが高まり、扱う画像データ量も増加しています。それに伴い、GigE Visionにもより大きな通信帯域が求められるようになり、従来からの弱点が、より顕在化しています。
そこで重要になるのが、GigE Visionのメリットを維持したまま、これらの課題をどう改善するかという点です。
GigE Vision 3.0最大の特長「RDMA」が変える画像転送
こうした課題に対し、GigE Vision 3.0では画像転送の仕組みが大きく変わります。その鍵となるのが、RDMA(Remote Direct Memory Access)を用いたデータ転送です。従来のGigE Visionのメリットを維持しながら、画像取り込み時のCPU負荷削減が実現します。
下図の通り、従来のGigE Visionでは、画像データがNIC(Network Interface Card) → ドライバー → 通信プロトコル → ソケット → アプリケーションと複数のレイヤを経由し、そのたびにメモリコピーが発生します。10GigEなどで大量のデータを扱う場合、このメモリコピー処理がCPUリソースを大きく圧迫します。
これに対してRDMAでは、NICが受信したデータをアプリケーションバッファへDMA転送します。つまり、中間のソフトウェアレイヤを経由して何度もデータをコピーするのではなく、アプリケーションが利用するメモリ領域へ直接データを転送することで、CPUに負荷がかからない状態を実現します。

これにより、以下2つのメリットにつながります。
① CPU負荷に左右されにくい安定した画像取得
画像取り込みにかかっていたCPU負荷が削減されるため、その分のCPUリソースを画像処理や解析などに割り当てることができ、システム全体を安定して動作させやすくなります。
② 遅延・ばらつきを抑え、リアルタイム性を向上
CPU処理への依存がなくなるため、画像データをアプリケーションへ素早く届けるとともに、到達時間のばらつきも抑えることができます。また、複数台のカメラを接続した場合でも安定した画像取得が可能です。
このようにRDMAによって、従来のGigE Visionで課題となっていたCPU負荷とリアルタイム性を改善し、GigE Visionのメリットを維持したまま、高速・大容量な画像転送を安定して行えるようになります。
RDMA実用化を支えたAIデータセンターの進化
RDMA自体は、GigE Vision 3.0によって新たに生まれた技術ではありません。以前から存在していた一方で、利用にはRDMA対応NICなどの専用ハードウェアが必要となるため、コスト面を含め、産業用途へ広く導入するにはハードルがありました。この状況を大きく変えたのが、近年のAIデータセンターの急速な拡大です。AIデータセンターでは、大量のデータをサーバー間で高速に転送する必要があり、10GbE、25GbE、100GbE、200GbE、400GbE、さらに800GbEへとEthernetの高速化が進んできました。それに伴ってRDMA技術も発展し、対応NICの普及・成熟によってハードウェアのコストも低下したことで、現在では産業用途でも導入しやすい環境が整っています。

GigE Vision 3.0対応、10GigEカメラが登場
GigE Vision 3.0に対応する製品として、Baslerから10GigEインターフェースを搭載したace 2シリーズが登場します。
ace 2の10GigEは、29mm × 29mmのコンパクトな筐体サイズを維持しながら、PoE給電にも対応しています。従来は、PoE対応に必要な回路を含めると筐体が大きくなりやすく、小型カメラへの実装が難しいという課題がありましたが、近年、データセンター向けを中心に技術開発が進み、内部部品が小型化したことで、ace 2の29mm角筐体のまま10GigEとPoE給電の両立を実現しています。
さらに、低消費電力設計によって発熱も抑えられています。
ラインナップは5.1MPから24.5MPまでを揃え、最大232fpsの高速撮像を実現しており、幅広い用途に対応します。
RDMA対応ネットワークカード

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GigE Visionの未来
現在、AIデータセンターでは400GbE、800GbEといった高速Ethernetがすでに利用されています。マシンビジョンにおいても、画像データの大容量化が進む中で、今後さらに大きな通信帯域が求められる場面が増えていくと考えられます。
実際に、CMOSセンサーの高解像度化・高速化が進んでおり、すでに10GigEを超える帯域が必要となるケースもあります。GigE Vision 3.0では、RDMAの採用によって高速Ethernetの帯域をより効率的に活用できるようになり、こうした高速CMOSセンサーにもGigEベースで対応できる可能性が広がっています。
BaslerはGigEカメラのパイオニアとして、今後もGigE Visionの進化をいち早く製品へ取り込み、革新的なビジョン製品を市場へ投入し続けます。









