本号では、リンクスの「メーカー」機能であるエンベデッドシステムソリューション事業における【SerDesソリューション】を紹介します。
標準カメラインターフェースをお使いのお客様から、「発熱の問題が・・・」「サイズが大きく装置に収まらない・・・」「ケーブル長が足りない・・・」「伝送帯域が足りない・・・」といった声をお聞きします。
これらの課題を解消できるのが、【SerDesソリューション】です。
特に、これから新たに、装置に小型かつ低発熱のカメラを複数台搭載したいとお考えの装置メーカーの設計担当者の皆様は、是非ご覧ください。
カメラ標準インターフェースにおける課題
代表的なカメラ標準インターフェースである、USB、GigE、CameraLink、CoaXPress、5・10GigEを利用されているお客様から、最適なカメラシステムという観点では課題があるという声をお聞きします。
本当はもう少し小型で低消費電力かつローコストでないと、システムの要件に合わない・・
FPSも上げたい、スペースが許せば後付けでもカメラ設置台数を増やして置けるようにしておきたい・・・
このような問題を突破しようとしたときに、標準的な汎用PCビジョンのカメラシステムでは限界があります。
カスタムにはなりますが、これらの課題を解消できるのが、【SerDesソリューション】です。
SerDesソリューション
■ここでSerDesと呼んでいるインターフェースとは?
SerDesとは、
・カメラCMOSセンサから【MIPI】で出力されたデータを『シリアライズ』し
・ケーブル延長、中継した後
・キャリアボード側で『デシリアライズ』しMIPIへ戻してSoCへ入力する
ことができるもので、データ伝送の速度を向上させるために開発された技術のことです。
自動車業界を中心に使われていたものがマシンビジョン業界にも適用されるようになりました。
『シリアライズ』『デシリアライズ』を行うことは同じSerDes技術ですが、いくつか方式があります。リンクスの【SerDesソリューション】では、マシンビジョン向けに適した、『V3Link』を採用しています。
■【SerDesソリューション】を実現できるリンクスの技術
SerDesはマシンビジョン業界で標準化された規格にはなっていません。SerDesカメラとして市販されているものも中にはありますが、SerDesカメラを買えばいいという訳ではなく、カメラの評価ノウハウ、画質のチューニング技術を有していなければ最適化はできません。
我々リンクスであれば可能です。そのための技術があります。
開発事例:
・『MIPI』出力を持つSONY製5MP CMOSセンサ
・SerDes変換し、ボードを介して、Jetsonのボードへ画像を取り込み
・ケーブル長や中継に応じてインピーダンスマッチングなど最適なチューニングを適用
■SerDesソリューションを含む、カメラ開発実績
■デモ機紹介(2024画像機器展にて展示)
◎リアルタイム画像処理
・カメラ8台: SONY IMX567
・プラットフォーム: Intel Core i5 + Windows
・HALCON画像認識
◎装置内監視
・カメラ4台(SoCの1ポートMIPIのみ使用): SONY IMX900
・プラットフォーム: NVIDIA Jetson + Linux
SerDesソリューションが適している用途
■SerDesソリューションが適している、用途および要望
なぜSerDesがマシンビジョン業界におりてきたのか。
それは、【SerDesシステム】は、伝送距離を確保でき、小型でかつ低発熱であり、レイテンシーも少なく、そしてコストも抑えられるからです。
・ケーブル伝送距離
GigEの100mまではいらないけれどもUSB3のメタルの3-5mではちょっと短い、という方、15mまでリピータなしで使用できます。
・ケーブル取り回し
CameraLinkケーブルの太さや堅さが課題だ、という方、同軸ケーブルやツイストペアを使えます。
・カメラサイズ
カメラを後付けで複数設置する必要がありスペース要因があるので筐体型が上手くはまらない、という方、ボード型カメラや分離型カメラヘッドを使えます。
・レイテンシー
GigEやUSBのようにパケットからデータを取り出すプロトコル処理がソフトウェアで行われるのではなく、CameraLinkと同じようにハードウェア処理なのでリアルタイム性が保証されます。
・発熱
カメラの消費電力の問題は後段のFPGAに搭載のISPです。このISP実装をカメラ側から外すことで、消費電力は大きく変わり、例えば、12MPカラーUSBカメラなら消費電力は3W程度になります。
一方で、MIPIカメラはイメージセンサがカメラ基板に実装されてはいますが、そのあとのFPGA、メモリ、IFICはないため、発熱要因が抑えられています。例えば、13MPカラーMIPIカメラでの消費電力は1.3W程度です。つまり、消費電力が半分以下となります。
・コスト
装置内にカメラを複数台設置する場合は、非常に有効です。
他インターフェースのカメラシステムと比較して、1対1ではトータルコストとして、SerDesカメラシステムはコストメリットがありません。しかしながら、4台接続、8台接続というように、接続台数が増加するほど全体コストは低減できます。例えば、3MP USBカメラをPCに4台接続した場合との比較では、約1/2程度のコストとなります。
マシンビジョンインタフェース比較
■マシンビジョンインタフェース比較(帯域 vs ケーブル長)
各種インターフェースにおける、ケーブル長と伝送帯域幅の関係をマッピングしたものです。
横軸:ケーブル長、縦軸:帯域 です。
USB3Visionの場合、帯域は5Gbpsありますが、メタルのパッシブですとケーブル長は3~5m程度です。ケーブル長を10m超えて長くした場合、電圧降下は225mv以上になってしまうため、アクティブ光ケーブルを利用するか、別途リピータのような追加のハードウェアが必要です。
SerDes(V3Link)では、ケーブル長15mが可能です。
GigEの場合、帯域は1Gbpsですのでデータ伝送に課題があります。13.MP・カラー・30PFSが1Gbpsの限界です。これを超える、例えば1.3MP・カラー・60fpsは不可能です
SerDes(V3Link)では、帯域は4.16Gbps、さらに、次世代になると7.55Gbpsの帯域となります。
CameraLinkの場合、USBやGigEへ変更できないのはリアルタイム性を損なう懸念を払拭できないためでした。
SerDes(V3Link)では、リアルタイム性はCameraLinkと同等です、かつケーブルも同軸やツイストペアなので細くできます。
■マシンビジョンインタフェース比較(システム要件)
システム要件に対して、各種インターフェースの適性をまとめたものです。
長所と短所が混在します。
システム要件(消費電力・発熱、システムコスト、リアルタイム性)においては、他のIFに比較して、SerDes(V3Link)はアドバンテージがあります
■マシンビジョンインタフェース比較(まとめ)
【SerDesソリューション】は、マルチカメラ接続が求められる場合において、「小型x低消費電力、コスト」の観点から有効です。
・USB3⇒SerDes
ケーブル延長が可能で、かつ、レイテンシー低減を実現できます
・GigE⇒SerDes
レイテンシー低減を実現し、かつ、帯域が4倍出せるため、取り込み速度を含めたデータ伝送量を増大させることができます
・CamaraLink⇒SerDes
ケーブルを同軸1本またはツイストペア1本へ変更できるため、コネクタ含むカメラ筐体までダウンサイズが可能、かつ、レイテンシーを維持できます
・CoaXPress⇒SerDes
レイテンシーを維持し、かつ、小型化と低消費電力を両立できます
アプリケーションのご要求に応じて
適切なイメージセンサ/プラットフォームをご提供します
特に装置組み込み型の場合、標準インターフェースでは 最適化が難しいケースにおいて【SerDesソリューション】が活用できる場面が多くあります。
我々リンクスはいくつものプロジェクトを手掛けて量産化させている実績がすでにあります。
カメラシステムでお困りのことがございましたら、是非、リンクスにご相談ください。
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