Teledyne DALSAの強み
TDIラインカメラのパイオニアであるTeledyne DALSAには、CMOS開発が可能なセンサーグループがあります。そこで開発した特殊CMOSを使ってカスタムで特殊カメラを開発するグループと、皆様がDALSA製品として市場で目にする標準品を開発するグループに分かれております。
カスタム事業では、開発費が数億円以上、カメラ価格も数千万円以上といった最先端の超特殊カメラを半導体製造装置メーカーや最先端のライフサイエンス研究向け、防衛、航空宇宙産業などに提供しています。
Dalsaの強みはカスタムで培った最先端技術の一部を標準品として、開発費なしで、手ごろな価格で一般市場に提供できるところにあります。このようにして、DALSAはラインスキャンカメラのハイエンド市場のすそ野を広げ続けています。
1MHzでのスキャンが可能なTDIカメラ Linea HS2
DALSAの最先端のCMOSセンサーを搭載し、1MHzでのスキャンを可能にしたLinea HS2が近日リリースになります。Linea HS2は、従来のLinea HSシリーズ16kの最速モデルと比較しても2.5倍のラインレートを誇る、世界最速のTDIラインスキャンカメラです。ラインレートが速くなることで露光時間が短くなり、画像の明るさとのトレードオフが発生したり、高速にスキャンしたものの後段の画像処理がボトルネックになりがちですが、Linea HS2ではそういった既知の課題に対する対策が幅広くなされており、以下でそれをご紹介していきます。
1. 30%以上の量子向上を実現したBack Side Illumination(BSI)
以前のLINX Expressにて、Teledyne DALSAだから実現できる4つのTDIテクノロジーのうちの1つとしてBSIの技術を紹介させていただきました。Linea HS2でも同様にBSIセンサーを採用しており、Front Side Illumination(FSI)センサーを搭載した従来のLinea HSと量子効率のピーク値比較で30%の改善がなされています。また、UV領域においても量子効率が50%向上しています。これは、高まり続ける検査精度の要求に対応するための機能改善です。
半導体ウエハーやOLED、マイクロLED等への検査精度の要求は高まり続けており、過去は5μm/pixelほどの分解能だったところが、今日では1.5μm/pixel、今後は1μm/pixel以下の精度が要求されていくようになります。レンズの倍率が高くなってピクセル分解能が細かくなっていくと、使用する照明の波長も短くしていく必要がありますが一般的にはUV領域に感度があるセンサーは少ないです。
Linea HS2は、今までと同じ速度でより細かく検査するというトレードオフの要求に対応する為に、ラインレートの向上だけでなく、UV領域での感度の大幅な向上も実現した製品になっています。
Linea HS2とLinea HSの量子効率特性のグラフ
2. TDIアレイの更なる多段化による明るさ向上
Linea HSでは、TDIセンサーアレイを複数段に分けることで、明るさを積算していく一般的なTDI以外の活用が可能になっています(参照:LINX Express Vol.463)。そのうちの一つであるHigh Full-Well (HFW) Modeでは、2つのセンサーアレイで撮像した2枚の画像をカメラ内部でビット演算することで一般的なTDI撮像時よりもノイズを抑えた画像の取得が可能です。
Linea HSのHigh Full-Well Modeの概念
Linea HS2では、Linea HSよりもさらに1段多い3段構成のTDIセンサーアレイを採用しており、FSIからBSIへの変更による感度向上だけでなく、2段目のセンサーを128ラインに拡張することでHFW撮像においても通常のTDI撮像と同等の明るさを実現できるようになりました。
Linea HS2とLinea HSのセンサー構造の違いと撮像画像の明るさ比較
3. 画像入力ボードのデイジーチェーン機能による画像処理負荷の分散
16kの画像を1MHzという速度で取り込んだ際には、画像処理の速度が次のボトルネックになると思います。大容量の画像処理を行うケースでは複数台のPCにデータを分割転送し、負荷を分散させる対応が取られることが一般的ですが、Dalsaの画像入力ボードは、ボードをデイジーチェーンで接続して、データを分割転送する機能を標準機能として兼ね備えております。この機能のおかげで、3rd Partyメーカーの分配器なしで、最大12台のパソコンまでデイジーチェーン接続が可能です。
Linea HS2からデータを分割転送する場合の例
ハイエンド市場のすそ野を拡げ続けるTeledyne DALSA
冒頭でご紹介した通り、DALSAはカスタムで培った最先端技術を標準品として市場に提供しています。下図は5年間にリリースされたLinea HSの初期の製品である16k、400kHzのモデルを中心にDALSAの製品の進化を示した図になっています。
今回ご紹介したLinea HS2は速度方向に機能を向上したモデルですが、その他にもDALSAだけが商品提供できるユニークな製品があります。Linea HS 32k SRは解像度方向に機能を向上したモデルで、16kの2つのTDIセンサーをハーフピクセルずらして配置して撮像した画像を、特許技術によるオンボードでの画像処理で32kの画像を出力することができる世界最高解像度のTDIカメラです。
図の中でピンクで示した領域はDALSAだけが製品供給が可能な領域になっており、ハイエンド領域においてDALSAがどれほど唯一無二な製品を供給している会社であるかがわかります。
TDIカメラ Linea HSシリーズの代表モデルのマッピング
TDI以外の製品でも同様にユニークな製品を提供しています。例えば、RGB+NIRの4ラインのセンサーを搭載したLinea MLシリーズでは、世界で唯一16kのモデルを提供開始します。今までは8kがマーケットに存在する最高解像度のモデルでしたが、16kへより高解像度な方向への機能向上を行った製品と、4kへ解像度を落としてコストダウンも行ったモデルがラインナップに追加されます。
プリント基板やウエハの検査においてNIRの波長が活用されるケースは多々あります。そういったアプリケーションでは検査の高精度化への要求が高まり続けており、そういった要求に応えることができる製品です。
Multi Lineカメラ Linea MLシリーズの代表モデルのマッピング
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