2024年1月にiRAYPLEから3機種のGigEカメラがリリースされました。近年、主に位置決めなどに使用される低解像度のカメラにおいては、新しいCMOSセンサーを搭載した新製品はほとんどなく、市場でも価格が膠着状態にありました。今回リリースになったカメラは、2.4MPの解像度で、グローバルシャッタータイプの最新センサー GMAX4002搭載でありながら、これまでにない低価格を実現しました。
今号では、新製品の特長を皆様にご紹介します。
グローバルシャッターなのに、
ローリングシャッターよりも安価
現在、2MPクラスの産業用カメラの市場価格としては、ローリングシャッターが3万円程度、グローバルシャッターが5万円程度が一般的です。新製品は、グローバルシャッターでありながら29,800円と、ローリングシャッターの市場価格を凌ぐ低価格を実現しております。
今回リリースになったモデルは下記3機種です。
型式 | センサー | 解像度 | センサー サイズ | ピクセル サイズ | フレーム レート | シャッター | モノ/カラー | IF | レンズ マウント |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AE5137MG010E | Gipxel GMAX4002ROI | 1.3MP 1280 × 1024 | 1/2.7″ | 4.0 × 4.0 µm | 90 fps | Global | Mono | GigE | C |
AE5207MG010E | Gipxel GMAX4002 | 2.4MP 2048 × 1200 | 1/1.7″ | 4.0 × 4.0 µm | 48 fps | Global | Mono | GigE | C |
AE5207CG010E | Gipxel GMAX4002 | 2.4MP 2048 × 1200 | 1/1.7″ | 4.0 × 4.0 µm | 48 fps | Global | Color | GigE | C |
現在の主力モデルとの価格比較
1.3MPにおいては、現在主力製品であるIMX273搭載カメラと比較し、40%のコストダウンが可能になります。
2.4MPにおいては、現在主力製品であるIMX392搭載カメラと比較し、25%のコストダウンが可能となります。
リンクスでは、監視カメラで世界トップクラスのシェアを誇る親会社を持つiRAYPLEがマシンビジョン市場に起こす変化について度々ご紹介してきました。今回iRAYPLEは、スケールメリットを活かした低価格化に加えて、市場価格を遥かに凌ぐ低価格設定を戦略的に行うことで、産業用カメラ市場を先導するメーカーに躍進します。
新製品の画質性能評価
リンクスでは、新製品のリリースを前に、GMAX4002を搭載したカメラを、感度、ダイナミックレンジ、標準偏差の3項目で比較評価しましたので、その結果をご紹介します。
■評価条件
・使用カメラ:
AE5137MG010E:GMAX4002搭載の1.3MPモノクロカメラ
A7160MG000E:IMX273搭載の1.6MPモノクロカメラ
A5131MG75E:PYTHON1300搭載の1.3MPモノクロカメラ
・カメラパラメータ:露光時間25 msec(40fps相当) / Gain1.0 / Gamma1.0
・レンズ:CF16ZA-1S
・照明:IFPA-400/400AWHV
・撮像対象:グレースケールチャート(γ = 0.45、明部反射率83.2%、暗部反射率2%)
※今回、カメラの設計が同等であることを仮定し、間接的にセンサーの仕様比較を行っています。
■評価項目
感度:一定の光量でカメラが表現できる画像の明るさ
ダイナミックレンジ:カメラが表現できる最も明るい画素と最も暗い画素範囲
標準偏差:画像の輝度値のばらつき
同じカメラで比較する場合、感度はセンサーの仕様である飽和容量が大きいと多くの電荷を必要とするため感度が低くなり、ダイナミックレンジは電荷が多いと明暗の表現幅も広くなるためトレードオフの関係があります。また標準偏差は、画素の輝度値のばらつきを表すためノイズ量を示す指標となり、通常明るい画像を取得する場合、ゲインを上げる必要がありノイズ量も多くなるため、感度とトレードオフの関係があります。
■感度比較結果
下図は、3機種のカメラでカメラパラメータと照明条件を同一にし、グレーチャートを撮像した画像です。
撮像条件は同じですが、センサーの違いによって画像の明るさが異なることがわかります。Onsemi製のセンサーPYTHON 1300で撮像した画像が最も明るく、感度において優位であることがわかります。感度の違いの主な理由は、飽和容量の差にあります。飽和容量が小さい場合、同じ光の量でも画像が明るくなるため、PYTHON1300、GMAX4002、IMX273の順で明るい画像になっています。
■ダイナミックレンジ比較結果
続いて、ダイナミックレンジの簡易比較を行うため、3機種のカメラでカメラパラメータを同一にし、下図の通りグレーチャートの端の2つの領域が同じ輝度となる照明値を確認しました。下図はグレーチャート明部の撮像画像ですが、暗部でも同様に撮像を行い、その照明の最大値と最小値を各カメラで表にまとめています。さらにグレーチャートの明部と暗部の反射率を考慮し、ダイナミックレンジの値も算出しております。
照明最大値 | 照明最小値 | ダイナミックレンジ[dB] | |
---|---|---|---|
GMAX4002 | 420 | 150 | 41.32 |
IMX273 | 529 | 190 | 41.27 |
PYTHON1300 | 357 | 160 | 39.35 |
この条件においては、GMAX4002、IMX273、PYTHON1300の順でダイナミックレンジの数字が高いことがわかります。PYTHON1300は、少ない光量でも明るく撮像できますが、対象を細かく表現することは難しく、表現力を示すダイナミックレンジにおいてはGpixelやSonyが優位であることがわかります。
■標準偏差比較
最後に、3機種のカメラのカメラパラメータは同一、照明の照度を調整し、グレーチャートの輝度値を同じ値にした画像が下図です。
また、グレーチャートの①〜⑪の各輝度値で標準偏差を比較したグラフが以下です。
標準偏差の値が小さいと輝度のばらつきが少なくノイズが少ないことを意味しています。グラフを見ると、GMAX4002は高画質に定評があるSonyセンサーと比較しても、同等もしくはそれ以上の性能であり、最もいい結果になりました。
■まとめ
各センサーの評価結果とコストを以下表にまとめました。
GMAX4002を搭載した今回の新カメラは、現在市場で最も普及しているSonyの第二世代センサーを搭載したカメラと比較しても、感度、ダイナミックレンジ、標準偏差(SNR)のすべての項目において、同程度もしくは同等以上の性能を持つことを実機で確認しました。表にはEMVA1288に基づいた数値も記載しており、これと比較しても検証結果が正しいことがわかります。
iRAYPLEの新製品はただ低価格なだけではなく、非常にコストパフォーマンスに優れたカメラであり、お客様のビジョンシステムにおける低コスト化や同コストでの多カメラ化などを実現する強力な武器になる製品です。
Gpixel GMAX4002 | Sony IMX273 | Onsemi PYTHON1300 | |
---|---|---|---|
感度 | 〇 | 〇 | ◎ |
ダイナミックレンジ (EMVA値) | ◎ (68.0 dB) | ◎ (71.4 dB) | 〇 (57.3 dB) |
標準偏差 (SNR) (EMVA値) | ◎ (40.5 dB) | ◎ (40.2 dB) | 〇 (38.9 dB) |
コスト | ◎ | 〇 | △ |
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