前号にて、カラーTDIカメラで発生する画像の輪郭部分に本来存在しない色が生じる現象(色ズレ)の種類と対策のうち[1] 搬送方向のズレ・画像全体で発生について解説しました。今号では、残り2つの[2]水平方向のズレ・画像全体で発生、[3]全方向のズレ・画像の一部で発生の2つを解説します。
色ズレの種類とその対策
[2] 水平方向のズレ・画像全体で発生
画像全体で下図のような水平方向のズレが発生する場合です。
このような水平方向のズレは、カメラと被写体が完全に正対せず、いずれかの方向に傾いている場合に発生します。
例えばカメラが水平方向に傾いている場合、カメラのスキャン方向と搬送方向の軸がズレているため、下図に示すように搬送が進むほど対象物が水平方向にも若干移動してしまいます。これによって各ラインで撮像する箇所が水平方向にズレるため、色ズレが発生します。
水平方向の傾きによって生じるズレ量は、カメラの先頭のラインから末尾のラインまでの物理的な距離(326ライン分)と傾きの角度から、下記の式で求められます。
ズレ量 X[px] = 326 × tanθ
例えばθ=1°の場合、X = 326 × tan1°≒ 5.69 [px] となり、理論上は中心から±2.85pxほど広がって写ると求められます。
また、下図のようにカメラが搬送方向に傾いた場合も、水平方向に色ズレが発生します。傾きによって被写体が存在する平面までの距離が各色のセンサごとに微妙に異なるためです。手前のG(緑)のセンサの視野に対して、奥のR(赤)の視野は水平方向に広がっており、この差分だけ色ズレが発生します。
青(B)のセンサの中心を基準に考えた場合、赤(R)と緑(G)のセンサの端までの距離は前章の構造から計算することができ、およそ815umとなります。傾きによる中心と視野の端とで生じる撮像距離の差は、下記の式で求められます。
(撮像距離の差) = 815[um] × tanθ /(倍率)
例えば倍率1倍で搬送方向に5°の傾きがある場合、中心からセンサ端までの撮像距離の差は 815um×tan(5°) / 1 ≒71.3[um] と求められます。
更に、求めた撮像距離の差と使用するレンズの水平方向の視野角から、水平方向の視野範囲の差、つまりズレ量を求めることができます。例えば視野角が±22.6°のレンズを使用した場合、ズレ量は tan(22.6°)×71.3um ≒ 29.7 [um] ≒ 5.9 [px] と求められます。
これらの傾きによって発生する色ズレの対策としては、デジタル水平器などを使用し正確にカメラを治具に取り付けていただくことが挙げられます。
また、搬送方向の傾きに対しては、Linea HSシリーズのカラーカメラに搭載されているParallax Correction機能によっても補正が可能です。Parallax Correction機能では、低倍率側のセンサから取得された画素を補間することで、高倍率側と視野を一致させます。
上図のように、最大で5px程度の色ズレを補正できるため、カメラをできるだけ水平に取り付けた後に生じる軽微な色ズレの補正のために使用可能です。
[3] 全方向のズレ・画像の一部で発生
平面上の被写体に対してランダムな方向にズレが発生する場合です。これまでの画像全体で同様の傾向を示していたズレとは異なり、下図のようにある箇所ではズレているのに、別のある箇所ではズレていないといったことが起こる場合があります。
この現象は、主に搬送ステージから発生する振動によって、各色のセンサで撮像している箇所がランダムな方向にズレることで発生します。振動の振幅がそのままズレ量となりますので、色ズレを完全に抑えるためには、振幅を1pxあたりの分解能以下とする必要があります。振動を抑えるには、高精度のステージや免震台などの振動を抑制する機構を使用することが対策となります。
振動による色ズレかどうか切り分けるためには、Linea HSシリーズで設定可能なエリアカメラモード(TDI Area)で撮像を行うことが有効です。エリアカメラモードでは、TDIセンサの各ラインを順番に露光するのでなく、同時に露光することで通常のエリアカメラのような画像を得るモードです。エリアカメラのモードでもブレが発生する場合、TDIの積算によるズレではなく、振動が原因と切り分けられます。
また、被写体上に高低差がある場合、TDIカメラの原理上、段差の部分で色ズレが発生します。これは下図のように各色のセンサごとに光路がわずかに異なることにより、段差部分で撮像位置にズレが発生することが原因です。段差の向きによって様々な方向に発生する可能性があります。
LineaHSシリーズのラインナップ
前章でご紹介した通り、Teledyne DALSAのLineaHSシリーズでは「Spatial Offset」や「Parallax Correction」といった色ズレ対策のために有効な機能が搭載されています。Linea HSシリーズを導入することで、高品質なカラー画像ソリューションを実現可能です。
型式 | Mono/Color | 画素数 (横幅 x TDI段数) | 速度 (kHz) | ピクセル サイズ(um) | インターフェース | Multi Array | Super Res | BSI | Multi Field |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
HL-HM-32K40S-00-R | Mono | 32,768 x 64 | 400 | 2.5 (5) | CLHS AOC | ○ | |||
HL-HM-16K40H-00-B | Mono | 16,384 x 192 (128+64) | 400 | 5 | CLHS AOC | ○ | ○ | ||
HL-HM-16K30H-00-R | Mono | 16,384 x 192 (128+64) | 300 | 5 | CLHS AOC | ○ | |||
HL-FM-16K15A-00-R | Mono | 16,384 x 192 (128+64) | 140 | 5 | CLHS SFP+ | ○ | |||
HL-HM-13K30H-00-R | Mono | 13,056 x 192 (128+64) | 300 | 5 | CLHS AOC | ○ | |||
HL-FM-13K18H-00-R | Mono | 13,056 x 192 (128+64) | 180 | 5 | CLHS SFP+ | ○ | |||
HL-HM-08K40H-00-R | Mono | 8,192 x 192 (128+64) | 400 | 5 | CLHS AOC | ○ | |||
HL-HM-08k30H-00-R | Mono | 8,192 x 192 (128+64) | 300 | 5 | CLHS AOC | ○ | |||
HL-FM-08k30H-00-R | Mono | 8,192 x 192 (128+64) | 280 | 5 | CLHS SFP+ | ○ | |||
HL-FM-04k30H-00-R | Mono | 4,096 x 192 (128+64) | 300 | 5 | CLHS SFP+ | ○ | |||
HL-HF-16K13T-00-R | Color | 16,384 x (64+128+64) | 400 | 5 | CLHS AOC | ○ | |||
HL-HC-16K10T-00-R | Color | 16,384 x (64+128+64) | 300 | 5 | CLHS AOC | ○ |
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