以前の号にて、Teledyne DALSAが提供するハイエンド向けのTDI(Time Delay Integration)カメラであるLinea HSシリーズの優れた機能をご紹介しました。本稿では、カラーTDIカメラで発生する、画像の輪郭部分に本来存在しない色が生じる現象（色ズレ）について、その原因とTeledyne DALSAが用意しているソリューションをご紹介します。

カラーTDIカメラの原理と内部構造

TDIカメラでは、撮像レート(ラインレート)と被写体の搬送速度を一致させることで、被写体上の同じ箇所をセンサのライン数分だけ繰り返し露光します。取得した信号を累積することで高感度な画像が得られます。

カラーTDIカメラの内部では、R(赤), G(緑), B(青)の各色を撮影するセンサが下図のように間隔を空けて配置されており、同じ箇所を撮影した各色のセンサの信号をマージすることでカラー画像を生成しています。一例として計256段のラインを持つLinea HSシリーズの構造を示しています。

この構造が、搬送速度や設置条件によっては色ズレを引き起こす原因となります。

色ズレの種類とその対策

色ズレは、ズレの方向と発生する箇所に応じて以下のように分類されます。

[1] 搬送方向のズレ・画像全体で発生
[2] 水平方向のズレ・画像全体で発生
[3] 全方向のズレ・画像の一部で発生

それぞれ原因と対策方法が異なりますので、個別にご紹介します。

[1] 搬送方向のズレ・画像全体で発生

前章の通り、TDIカメラでは撮像レートと被写体の搬送速度が一致していることが前提となります。これらが一致していない場合、各ラインで撮像する位置がズレてしまうため、下図のように搬送方向に色ズレが発生します。

この現象を解決するためには、撮像レートもしくは搬送速度を適切な値に変更する必要があります。

例として、ピクセルサイズが5umのLineaHSシリーズに、倍率1倍のレンズを組み合わせて使用する場合を考えます。1pxあたりの分解能は 5um/pxとなります。適切なラインレートは、[搬送速度] / [分解能] の式で求められます。搬送速度を500mm/sとする場合、500,000 [um/s] / 5 [um/px] = 100,000 [px/s] = 100,000 [Hz] と求まります。

逆にラインレートから適切な搬送速度を求めることも可能です。その場合は、ラインレート[Hz]×分解能[um/px] の式によって、適切な搬送速度が求まります。

ただし、ステージが完全に等速でなく加減速する場合、ラインレートを適切に設定していても色ズレが発生する場合があります。搬送系から出力されるエンコーダ信号をライントリガーとして使用し、撮像を同期することで加減速にも対応したズレの無い画像が得られます。

また、Linea HSシリーズのカラーカメラには、Spatial Offsetという補正機能が搭載されています。こちらは各色に対して垂直方向の同期を調整できる機能でして、各色に対して±5px程度の色ズレを補正することが可能です。

ただし、こちらの機能で補正可能なズレ量には限度がありますので、あくまで撮像レートと搬送速度を一致させた上で生じる軽微な色ズレの補正のための機能とお考えください。

次号のLINX Express では、カメラの傾きによる水平方向のズレとステージの振動によるランダムなズレについて解説します。
LINX Express Vol.522をお待ちください。

LineaHSシリーズのラインナップ

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