SONYセンサー搭載SWIRカメラ ace 2 X visSWIR
Baslerのace 2シリーズにSWIR(Short Wavelength Infra-Red 短波長赤外光帯域)カメラ ace 2 X visSWIR が登場しました。
SWIR光は、特定の物質を透過する性質を利用し透過観察などの用途に用いられたり、物質によって光の波長に応じた反射率や吸収率が異なる性質を利用し、肉眼では同じように見える物質を選別する用途などが必要とされる様々なアプリケーションに応用されております。一方で、SWIRカメラはこれまで専業メーカーだけが製造、販売を行っており、使用するにはコスト面を始めとしたハードルがありました。また、センサーは基本的にSWIR帯域にしか対応していないため、可視光域も必要とするようなアプリケーションでは、1台ずつそれぞれのカメラを使用する必要がありました。
Baslerが採用したSONYのSWIRセンサーIMX990 / 991には従来とは異なる下記2つの特長があります。
①ピクセルサイズが従来のSWIRセンサーと比較して小さいこと
従来のSWIRセンサーはピクセルサイズが20umから30μmであることが一般的で、可視光域のカメラと比較して大きい傾向にあります。理由は、受光部のInGaAs(インガス)層と、読み出し回路のSi(シリコン)層を接合する際のバンプ接続にあります。バンプ接続では、バンプピッチを確保する必要があるため、その分ピクセルサイズが大きくなってしまい、この製造方法では一般的な産業用CMOSセンサーと比べて画素を小さくすることができませんでした。
SONYはピクセルサイズを小さくするために、InGaAs層とSi層の接続に銅のパッド同士を接続することで電気的導通を図る技術(Cu-Cu接続)を用いることで、バンプ接合で必要とされる画素間の余分なピッチを排除しピクセルの小型化を実現しています。これにより、ピクセルサイズを5umまで微細化でき、多画素化が可能になりました。
②感度帯域が広いこと(400nm – 1,700nm、可視光帯からSWIR光帯に対応)
上述したように、従来のSWIRカメラは780nm以上の非可視光のみに感度を有しており、400~780nmの可視光を見る場合は別途可視光用のカメラが必要でした。IMX990 / IMX991は、可視光を吸収してしまうInGaAs層のベースとなるInP(インジウム・リン)層を薄くすることで、可視光をその下のInGaAs層まで透過させ、可視帯域にも感度を持たせることに成功しています。これにより、可視光と非可視光で別々に必要だったカメラを1台にまとめることができ、システムをよりシンプル、安価で構成することが可能になります。
SWIRセンサー搭載 ace 2の分光感度特性
Baslerはace 2のプラットフォームに同センサーを搭載することで、業界の中でも小型なSWIRカメラに仕立てております。筐体が大きくなってしまう要因は、画質を維持するための放熱設計にあります。ace 2の場合、29mm x 29mm x 42.8mmサイズの筐体に加え、レンズマウント部分を厚くすることで、レンズも活用したカメラシステム全体での放熱が効率よくできるように設計されています。また、ace 2のモジュールコンセプト(センサー、プロセッサー、インターフェースのそれぞれの基板を独立して設計しモジュール化することで、各基板の入れ替えで新しいカメラの設計を実現したコンセプト)により、同センサーを使用した他社カメラと比較してコストパフォーマンスが高い製品となっています。
ace 2では0.3MP(VGA)と1.3MP(SXGA)の2つのセンサーに、それぞれGigE、USB3インターフェースを搭載した4機種のラインナップで提供します。
型式 | センサー | 解像度 | ピクセルサイズ | センサーサイズ | フレームレート | シャッター | IF | レンズマウント |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
a2A640-240umSWIR | SONY IMX991 | 0.3MP 640×512px | 5×5μm | 1/4″ | 240 | Global | USB3 | C |
a2A1280-125umSWIR | SONY IMX990 | 1.3MP 1280×1024px | 5×5μm | 1/2″ | 125 | Global | USB3 | C |
a2A640-240gmSWIR | SONY IMX991 | 0.3MP 640×512px | 5×5μm | 1/4″ | 240 | Global | GigE | C |
a2A1280-80gmSWIR | SONY IMX990 | 1.3MP 1280×1024px | 5×5μm | 1/2″ | 125 | Global | GigE | C |
半導体シリコンウエハ検査、実装基板検査、医療機器、食品検査などのアプリケーションで、 ace 2 X visSWIRを使うことによる透過や見え方の違いにより、これまで検査できなかった検査内容を実現できます。下記に具体的な撮像例を示します。
①のシリコンウエハの検査では、可視光カメラはウエハ表面が写っているのみですが、SWIRカメラは裏面のパターンを写し出すことができます。
②の食品の充填検査では、不透明な食品パッケージを透過し最終的な食品の割れなどの検査が可能です。可視光では不透明に見えるパッケージでもSWIR波長では透過して内容物を確認できるケースがあります。
③の医療分野の検体検査では、検体の採取量などを測定することができます。物質によって光の波長に応じた反射率や吸収率が異なる性質を利用し、肉眼では同じように見える透明な検体でも有無を画像で確認できます。
④の基板検査では、回路パターンの撮影ができます。IMX990・IMX991の対応波長帯域が広いことで可視光による表面検査に加え、回路内部の非破壊検査の両方を1台で完結させることが可能です。
CoaXPress12 4ch対応 Baslerの最速カメラシリーズ boost V
boostシリーズはBaslerのCoaXPress12に対応したカメラシリーズです。これまでは主にSONY製のセンサーを搭載した1ch、2chのboost Rシリーズをラインナップしてきました。今回新たにGpixel社の3種類のセンサーGSPRINT4521(21MP)、GMAX0505(25MP)、GMAX3265(65MP)を搭載した 4chのモデルをboost Vシリーズとしてリリースしました。
これにより、今までのラインナップではご要望にお答えできなかった、下図赤色の領域の性能を必要とするお客様への製品提供が可能となりました。
筐体サイズも65×65×73mmとコンパクトで、50Gbpsのパワフルな高速撮像を実現します。
型式 | センサー | 解像度 | ピクセルサイズ | センサーサイズ | フレームレート | シャッター | IF | レンズマウント |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
boA5120-230cc | Gpixel GSPRINT4521 | 21MP 5120×4096px | 4.5×4.5μm | APS-C | 230 | Global | カラー | F |
boA5120-230cm | Gpixel GSPRINT4521 | 21MP 5120×4096px | 4.5×4.5μm | APS-C | 230 | Global | モノクロ | F |
boA5120-150cc | Gpixel GMAX0505 | 25MP 5120×5120px | 2.5×2.5μm | 1.1” | 150 | Global | カラー | F |
boA5120-150cm | Gpixel GMAX0505 | 25MP 5120×5120px | 2.5×2.5μm | 1.1” | 150 | Global | モノクロ | F |
boA9344-70cc | Gpixel GMAX3265 | 65MP 9344×7000px | 3.2×3.2μm | 3.2” | 70 | Global | カラー | F |
boA9344-70cm | Gpixel GMAX3265 | 65MP 9344×7000px | 3.2×3.2μm | 3.2” | 70 | Global | モノクロ | F |
Baslerは、boost Vシリーズと共にお使いいただける、メーカーが動作保障をした画像入力ボードも提供しており、画像取り込みにおける安定性も抜群です。また、Baslerの提供するSDK pylonでカメラ、画像入力ボード両方の設定を行うことができるため、システム設計時の工数や設定ミスによるトラブルのリスクを低減できることも魅力です。
お見積りはこちら | 製品に関するお問い合わせはこちら | 製品一覧はこちら |
ご意見・ご感想募集
LINX Expressに関する要望やご感想を募集しております。下記フォームよりお気軽にご投稿いただけましたら幸いです。
いただいたご意見については今後の運営の参考にさせていただきます。皆様のご投稿お待ちしております。