Vol.575にてご紹介したHALCON25.11の新機能について、多数のお客様より大きな反響をいただいています。
本記事では、ディープラーニング画像処理より「継続学習機能」、ルールベース画像処理より「マッチングのスコア可視化」に焦点を当て、最近のイベントで展示したデモ機を例に、より詳細に解説いたします。
実際に動かしているプログラムからより具体的なイメージを掴んで、ぜひHALCONの導入検討にお役立てください。
ディープラーニング:継続学習
HALCONのディープラーニング新機能の一つである「継続学習」機能は、既存の推論モデルを少ない画像で拡張する機能になります。

ディープラーニング運用上の課題
ディープラーニングを利用した検査装置でよく課題になるのが「破滅的忘却」です。
「破滅的忘却」とはディープラーニング学習モデルにおいて、新しいタスクを学習する際に、以前学習したタスクの知識や性能を失ってしまう現象のことで、例えばねじの種類を識別する画像分類モデルに対し、ナットのクラスを追加するためにその画像のみを学習させると、既存のネジ画像に関するデータを消失してしまいます。

この破滅的忘却を防ぐためには、「古い画像と同程度の枚数の新しい画像を」 「古い画像とともに」学習させなければなりません。
このデータの収集難易度・管理問題を解決するのが、継続学習機能です。
「継続学習」機能の概要
HALCONの「継続学習」機能を使うことで、過去の学習内容を保持したまま既存のクラスを拡張したり、新しいクラスを追加したりと、少ない画像で新たな特徴を学習させることができます。
■ドメイン拡張
既存の分類器の特徴を引き継ぎながら、既存のクラスに新たなパターンを覚えさせることができます。
例:「割れ」のクラスに異なったワークを覚えさせる、明るさの異なるパターンを覚えさせる、など

■クラス分類
こちらも同じく既存の分類器の特徴を引き継ぎながら、新たなクラスを追加することができます。
例:「OK」「割れ」のクラスの他、新たに「無刻印」を追加する、など

デモ機詳細
このデモ機は電子部品(抵抗)の選別工程を踏まえ、上記で紹介した「クラス分類」の機能を再現しています。

2Dカメラでワークを撮像し、事前に学習した「OK」「割れ」クラスに分類します。
ここでは分布外検出機能(OOD)(Vol.527)を使い、学習データに含まれていないパターンは「分布外」として仕分けをしていきます。

蓄積した画像データから、未分類(分布外)のものを新たに「無刻印」のクラスとして定義し、継続学習を実行します。
これにより元々存在していた「OK」「割れ」の他、「無刻印」についても新たに分類ができるようになりました。
デモ内のプログラムでは10枚の無刻印画像から新たなクラスを定義することができました。
このように「継続学習」機能で少ない画像でのクラス拡張が可能になるため、ディープラーニング画像処理のより効率的な運用が可能となります。
ルールベース:形状ベースマッチングのエッジスコア可視化
ルールベース画像処理の中でも特によく使われる機能の一つが形状ベースマッチングになります。
25.11ではモデルのエッジのうち、スコアカウントに使用されたエッジ、そうでないエッジを可視化できるようになりました。

形状ベースマッチングにおける課題
形状ベースマッチングとは、画像の輪郭形状でモデルを作成し、探索画像内のモデルの位置・角度・一致度 (=マッチングスコア) を出力する処理で、産業用画像処理の必須機能として幅広く使用されています。
しかしながら、従来はマッチングスコアの根拠が見えづらく、スコアを上げるためにモデルの作り方を試行錯誤する必要がありました。
それを解決するのがエッジスコア可視化機能になります。
「エッジスコア可視化」機能の概要
この機能を使うことでモデルのエッジのうち、スコアカウントに使用されたエッジ、そうでないエッジを識別できるようになります。
下記画像のように、「探索画像のどこがマッチングスコアを下げる原因になっているか」が見えるようになることで、モデルの品質向上に向けたフィードバックを得ることができます。

システム詳細
このデモ機ではシールにプリントされたロゴデータに形状ベースマッチングを適用しています。

右下の画像のように、ワークの重なりがありエッジを全周とれなかったケースについてはスコアが低くなり、重なった部分の色が変化していることがわかります。
このように、この色が変化している部分がマッチングスコアを下げる要因となっていることが見て分かります。
なお、この検出しきい値は任意で調節可能なため、ワークに応じて適切な値を設定いただけます。
エッジスコアの活用方法
エッジスコア可視化機能を活用すると、モデルに含まれるエッジのどこが不要であるかを容易に判断できます。
HALCON 25.11では結果を確認して手動でモデルを作り直しますが、今後のバージョンではこの工程を自動で行う機能の開発が進められていますので、これからの進化にもご注目ください。

HALCONに関するお問い合わせ、導入のご相談はリンクスまで
このように、HALCONは幅広いお客様に、より高度な画像処理をより使いやすく提供しております。新規の導入や、すでにご利用いただいているユーザ様のアップグレードのご相談は下記よりお問い合わせください。
また、HALCONの新機能を評価してみたいというお客様向けに、1か月無償でご利用いただけるHALCON Trial Kitをご用意しております。皆様がお抱えの画像処理の課題を新技術で解決するために、是非ご活用ください。










