HALCON Progress Editionは、半年ごとに新しい画像処理機能が追加される、進化を続けるソフトウェアパッケージです。5月27日にリリースされた最新版の25.05では、ディープラーニングや生成AIを含む先端テクノロジーと、ルールベースの画像処理機能を結び付けた、実用性の高い機能が提供されます。本号では、この25.05の新機能について詳しく紹介します。
Deep 3D Matchingのモデル生成が可能に
Deep 3D Matchingは、3D CADモデルを用いて、2D画像上に存在する対象物の3次元位置姿勢を推定する、ディープラーニングをベースとした新しい技術です。複雑になりがちなパラメータ化を最小限に抑えつつ、高いパフォーマンスを発揮するため、ロボットビジョンアプリケーションに最適です。特に、ばら積みピッキングのような厳しい条件下でも適切に機能します。
HALCON 25.05では、Deep 3D Matchingモデルをお客様ご自身で学習できるようになりました。新しいレンダリングモジュールを利用して、対象オブジェクトのCADモデルから学習データを生成できます。柔軟な設定が可能で、反射率や透過率、材質、表面粗さといった様々な特性をカバーできます。 この新しいトレーニング機能により、お客様は独自のニーズと環境に合わせてカスタマイズされた3Dマッチングアプリケーションを作成できるようになっています。
安定性を増した、より強力なDeep OCR
Deep OCRには、①画像上の文字領域を抽出する機能、②領域内の文字を読み取る機能、の2つの機能が準備されていますが、実際のアプリケーションでは、処理時間の短縮のため、①に関してはDeep OCR機能を使わず、文字領域を手動で設定したり、ルールベース画像処理によって検出したりすることがあります。このとき、余白を含まないよう適切に文字領域を切り抜く必要があるのですが、切り抜きが最適でない場合、②文字読取の精度が低下してしまいます。
HALCON 25.05では、Deep OCRの②文字読取機能に、文字領域をさらに正確に切り出すアライメントステップが追加されました。このステップを導入することにより、渡された文字領域が不正確な場合でも読み取り精度が大幅に向上します。加えて、このアライメントの処理は非常に効率的で、オーバーヘッドは最小に抑えられます。文字領域の切り出しがざっくりしたものであっても、信頼性の高い読取結果を維持できるため、全体の処理時間が大幅に短縮されます。
歪んだQRコードの読取も自由自在
HALCON 25.05では、QRコードリーダーの補正機能が改良され、曲面に印刷されたコードや、変形したコードでも、信頼性の高い読み取りが可能になりました。これにより、物流、包装、食品製造、ボトルラベルなど、平面でない素材にQRコードが印刷されることが多い業界でのアプリケーションの可能性が広がります。
補正処理により、完全に平坦な表面を必要とせずに、より高い読み取り精度を実現します。これはパラメータ設定で必要に応じて有効にすることができます。処理時間は標準的なQRコード読み取りよりもわずかに長くなりますが、堅牢性が向上しているため、精度要求の厳しいアプリケーションにとって価値の高い追加機能となります。
新技術トレンドに対応した新しいカメラインターフェース
HALCON 25.05には、最先端のカメラ技術との親和性が高い、新しいカメラインターフェースが導入されました。MVTecは常に効率的なカメラ接続に力を入れてきましたが、GigE VisionやUSB3 Visionといった標準規格の登場により、新たな可能性と課題が同時に生まれています。新しいインターフェースは、カメラ操作を簡素化すると同時に、高度な設定を完全に制御できるようにします。
これらの新しいオペレーターは、より明確で直感的なインターフェースでありながら、GenICam GenTLアーキテクチャを完全に制御でき、従来のオペレーターと同等以上のパフォーマンスを発揮します。お客様は、この新しいカメラインターフェースを用いることで、最新のカメラテクノロジーにスムーズに移行することができます。
HDevelopEVOの新プレビューバージョン搭載
HALCON 25.05には、HALCONの統合開発環境(IDE) HDevelopに加え、新しいIDE、HDevelopEVOの最新プレビュー版が搭載されます。外部プロシージャファイルを呼び出せるようになったり、グレイ値ヒストグラムツールが利用できるようになったりするなど、標準開発環境化に向けて着実に進化を続けています。
大きな進化として、開発者をより効率的にサポートする、AIアシスタントが追加されました。この機能を利用するには、ChatGPTなどの外部生成AIとの連携をユーザーが明示的に有効化する必要があります。これにより、AIの支援によるインタラクティブなチャット、コマンドエージェント、自動コード補完などが実現されます。
HALCON Progress Edition導入に向けて
このように進化を続けるHALCON Progress Edition、こちらを評価してみたいというお客様向けに、1か月無償でご利用いただけるHALCON Trial Kitをご用意しております。皆様がお抱えの画像処理の課題を新技術で解決するために、是非ご活用ください。技術的な不明点や、導入にあたってのご質問、ご要望がございましたら、弊社サポート窓口までいつでもお問い合わせください。
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