Linea HSの4つのTDIテクノロジー (後編)
前号ではTeledyne DALSAの強みと、TDIラインスキャンカメラLinea HSの4つの独自技術のうち2つを紹介しました。今号では、残りの2つのTDIテクノロジー、BSI(Back Side Illumination)とDichroic Filterついてご紹介します。
BSI(Back Side Illumination)
BSIとは、CMOSセンサーの受光面を配線層の上側に配置した構造のことで、裏面照射構造とも呼ばれます。従来のFSI(Front Side Illumination、表面照射構造)だと、センサーに入ってきた光が受光面に到達する前に配線層に反射してしまい、ピクセルサイズに対する受光面積は限られたものになってしまいます。BSIでは、この問題が解決され、同じピクセルサイズでも、より高感度化が可能です。
下記は、Linea HS BSIの分光感度特性のグラフです。赤線が従来のFSIセンサーを搭載したカメラ、青線がBSIセンサーを搭載したLinea HSの分光感度特性を示しています。BSI化により、全域にわたり感度が向上しています。
以下は、Linea HS BSIのTDI Summed Mode(128段使用)と、他社のTDI 256段で液晶パネルを撮像した画像です。ピクセルサイズ含め撮像条件は両カメラ共に同じです。Linea HS BSIのTDIの段数は、他社カメラの半分にも関わらず、全体的に明るい画像になっています。感度を上げようと思うとTDIの段数を増やすことを考えがちですが、量子効率の向上こそが明るい画像を撮るためのキーであることがこの結果からわかります。
また、紫外領域においての高感度化も実現しており、350nm付近の波長に対してはFSIのカメラに比べ10倍以上の高感度化を実現しております。高分解能な撮像を行う場合、使用する照明の波長を短くしていく必要があります。特に、1um/pixを超えるような高倍率で検査を行う場合にはUV照明が必要になってきますが、世の中にあるほとんどのカメラはUV領域の感度を有しておりません。そのため、UV領域の感度を向上させたLinea HS BSIは、超高倍率での検査が必要な方々への最善のソリューションと言えます。
Dichroic Filter(ダイクロイックフィルター)
Dichroic Filterとは、異なる特性のフィルターを何層も重ね合わせることで所望の特性を実現したフィルターのことです。Teledyne DALSAでは、独自のDichroic FilterをウエハーレベルでCMOSセンサーに実装することで、下記のように従来のDye Baseのオンチップフィルターを実装した一般的なTri-Lineaカラーカメラと比較して、RGB間の感度の重なりを大幅に減らしたカメラを提供しております。
Dichroic Filterは、3板式カメラで使われるプリズムの貼り合わせ時に色を分離するために使用されている技術でもあります。そのため、Bayer方式や一般的なTri-Lineaのカラーカメラに比べ高い色再現性を有することが大きな特長の一つです。
また、RGBの感度の重なりがほとんどない特長を活かし、使用する照明の波長を工夫することで、1スキャンで3種類の画像を取得することが可能です。凹みや膨らみなど欠陥の種類が違うと、それを撮像するための最適な照明の当て方も異なります。そのような複数種類の欠陥検査を行う場合、照明の当て方を変えた画像をラインカメラで撮る方法は大きく下記の二つがあります。
①2台のカメラと2台の照明で1回ずつ撮像する方法
②1台のカメラと1台の照明で2回撮像する方法
従来手法の場合、下記のようにコストおよび設備サイズと検査時間のトレードオフになってしまいます。
ここで、Dichroic Filterの特長が活きてきます。RGBの感度の重なりがないため、下図のように分光感度特性のピークに合わせてRGBの照明を選定することで、スキャンの際に1すべての照明を同時点灯させても赤の光は赤のセンサーが、緑の光は緑のセンサーが、青の光は青のセンサーがそれぞれ受光します。そのため、1スキャンで3枚の異なる画像を取得可能で、従来手法の課題を一度に解決することができます。
Linea HSのラインナップ
下記表に示すのが、Linea HSのラインナップです。画素数、速度、ご紹介した4つのTDI技術を含め、様々なラインアップでお客様のハイエンドなご要望に幅広く貢献します。
リンクスでは、Linea HSをはじめ、Teledyne DALSA製品の評価やデモ機のお貸し出しを行っていますので、お気軽にご連絡ください。
Mono/Color | 画素数(横幅 x TDI段数) | 速度 (kHz) | ピクセルサイズ(um) | インターフェース | Multi Array | Super Res | BSI | Multi Field |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Mono | 32,768 x 64 | 400 | 2.5 (5) | CLHS AOC | 〇 | |||
Mono | 16,384 x 192 (128+64) | 400 | 5 | CLHS AOC | 〇 | 〇 | ||
Mono | 16,384 x 192 (128+64) | 300 | 5 | CLHS AOC | 〇 | |||
Mono | 16,384 x 192 (128+64) | 140 | 5 | CLHS SFP+ | 〇 | |||
Mono | 13,056 x 192 (128+64) | 300 | 5 | CLHS AOC | 〇 | |||
Mono | 13,056 x 192 (128+64) | 180 | 5 | CLHS SFP+ | 〇 | |||
Mono | 8,192 x 192 (128+64) | 400 | 5 | CLHS AOC | 〇 | |||
Mono | 8,192 x 192 (128+64) | 300 | 5 | CLHS AOC | 〇 | |||
Mono | 8,192 x 192 (128+64) | 280 | 5 | CLHS SFP+ | 〇 | |||
Mono | 4,096 x 192 (128+64) | 300 | 5 | CLHS SFP+ | 〇 | |||
Color | 16,384 x (64+128+64) | 400 | 5 | CLHS AOC | 〇 | |||
Color | 16,384 x (64+128+64) | 300 | 5 | CLHS AOC | 〇 |
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