光学系や画像処理の変更なしにCCDからCMOSへを実現するピクセルビヨンド
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現在主流となっているCMOSセンサーには、CCDセンサーと完全コンパチのものは存在しないため、CCDセンサーから、CMOSセンサーへの移行を行う際には光学系や画像処理アプリケーションの変更が必要になります。しかしながら、CCDセンサーの性能には満足しているため開発工数を割いてまでCMOSセンサーへの置き換え評価を実施したくない方々も多くいらっしゃると思います。
そういった方々はCCDカメラのディスコンのタイミングで数年分の在庫を確保し運用を続けてきたかと思いますが、その在庫もいよいよそこを尽き、本格定期にCMOSカメラへの置き換えを実施しなければならないという声を数多くいただくようになってきております。
ace 2シリーズのProモデルはBaslerの独自機能ピクセルビヨンドを搭載しています。ピクセルビヨンドは、ビニング係数として整数以外に小数点以下の数値も指定できるため、センサーの解像度を自由に調整することが可能です。これにより、CMOSカメラでもCCDと全く同じ画像をカメラ内部で生成し、光学系や画像処理アプリケーションの変更なしにCCDからCMOSへの置き換えを行うことができます。
今回は、具体的な評価結果と共にピクセルビヨンド機能を改めてご紹介いたします。
実機評価
使用機材と評価条件
今回はIMX392(CMOS)をICX424(CCD)に合わせる形で評価を行いました。レンズはBaslerの2/3インチ対応のC23-2518-5M-Pを使用しました。
3.45μmのピクセルを7.4μmに変換するにあたり、下記3種類の変換方法を比較しました。
①ピクセルビヨンド機能で2.145倍し、直接3.45μmから7.4μmに変換する方法
②2×2のビニング機能(Average)で3.45μmから6.9μmに変換した後、ピクセルビヨンド機能で1.072倍し7.4μmに変換する方法
③2×2のビニング機能(Sum)で3.45μmから6.9μmに変換した後、ピクセルビヨンド機能で1.072倍し7.4μmに変換する方法
②ではビニングによって生成されたピクセルの輝度を平均値から算出し、③では加算値で算出しております。
CMOSセンサーのダークノイズ評価
3つの条件でダークノイズへの影響が異なるかを事前に確認します。カメラは30分以上連続稼働した状態で画像を撮像しております。
下図は横軸の輝度値、縦軸に全体の画素数に対するその輝度のピクセル数の割合を示しています。ほぼ全てのピクセル輝度値が0ですが、ダークノイズの影響で3ピクセルだけ輝度値1のピクセルがあります。ただ、基本性能としてダークノイズの影響はほぼないと言えます。
ダークノイズへの影響評価の為に、ゲインを36に設定し、意図的にノイズ影響を可視化できるようにしました。この状態では下記のようにノイズの影響が出ています。この状態で、上記3つの変換を行いダークノイズへの効果を確認します。
①ピクセルビヨンド機能で2.145倍し、直接3.45μmから7.4μmに変換した場合
輝度値の範囲は9-47ので最小値と最大値の差は36ですが、多くのピクセルが24、25辺りの同じ輝度値になっています。
②2×2のビニング機能(Average)で3.45μmから6.9μmに変換した後、ピクセルビヨンド機能で1.072倍し7.4μmに変換した場合
輝度値の範囲は15-45で最大最小の差は30です。こちらも①と同じく多くのピクセルが24、25辺りの輝度値になっています。
③2×2のビニング機能(Sum)で3.45μmから6.9μmに変換した後、ピクセルビヨンド機能で1.072倍し7.4μmに変換した場合
ビニングの際に加算値を使用しているため輝度値の範囲が大幅に増加し、61-169になり最大最小の差は108です。
上記の結果より、ダークノイズに対しては①、②の方法を用いることで低減することが可能と言えます。③はダークノイズの低減への効果は薄いですが、センサーの感度向上への効果がありますのでニーズに合わせて最適な設定を使い分けることができます。
CCDセンサーとCMOSセンサーの比較
上記の①、②の変換方法を用いてCCDカメラとの画像の比較を行いました。露光時間は固定し、照明条件を変更することで明るさの異なる2枚の画像を撮像しました。
照明条件Aの場合
※クリックで拡大
照明条件Bの場合
※クリックで拡大
画像をご覧いただくと、CCDセンサーとほとんど一致した画像をCMOSセンサーで再現できていることがわかります。照明条件Bの結果を見ると、CCDカメラでは最小輝度値は1ですが、①の場合は3、②の場合は0になっています。CCDセンサーと同じピクセルサイズを再現する際には、直接ピクセルビニングを行うことで、ビニング(Avarage)後にピクセルビヨンドを行うよりもわずかながら感度を上げることができることが実験結果からわかりました。
まだまだCCDカメラをお使いのお客様も多いと思いますが、保有している在庫、カメラメーカーが提供できる期限の限界ももう目の前まで迫っています。しかしながら、現状のシステムの性能には満足しているので、光学系も画像処理も変更せずに置き換えの工数を最小に抑える方法をお探しの方々にはぜひ一度Basler ace 2 Proのピクセルビヨンド機能をご評価ください。