物流施設における作業効率の向上と人手不足対策として、マテリアルハンドリング(マテハン)機器の重要性が高まっています。本記事では、マテハン機器の種類や特徴、活用方法について詳しく解説します。
マテハンとは
本項では、マテハンの意味と、マテハンに関する業務の種類についてご紹介します。
マテハン(マテリアルハンドリング)の意味
マテハンとは、マテリアルハンドリング(Material Handling)の略称で、物流における物品の取り扱い全般を指す言葉です。原材料や製品などの搬入から保管、ピッキング、搬送、出荷までの一連の物品のハンドリング作業全般を含みます。効率的なマテハンは、物流コストの削減と作業品質の向上に直結する重要な要素です。
マテハンに関する業務とその代表的なマテハン機器
①積み込み・積み下ろし
トラックやコンテナへの荷物の積み込みや、荷降ろし作業です。パレットやケースなどの荷姿に応じて、適切な機器を選択することが重要です。重量物や大量の荷物を扱う際は、作業者の負担軽減と安全性確保のため、機械化が特に有効です。
■フォークリフト パレット単位での荷役作業に不可欠な機器です。電動式、エンジン式など、使用環境に応じて選択できます。近年は自動運転機能を搭載したモデル(AGF/Automated Guided Forklift)も登場し、省人化を推進しています。 | ![]() |
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■パレタイザ、デパレタイザ 製品のパレットへの積み付けや取り出しを自動化する機器で、作業の高速化と省人化に貢献します。特に規則的な荷姿の商品を大量に扱う現場で特に効果を発揮します。 ・パレットに積み付ける機械:パレタイザ | ![]() |
■バンニング、デバンニングシステム コンテナやトラックへの積み込み・取り出し作業を自動化する機器です。作業の効率化と安全性向上に貢献します。 ・積み込む機械:バンニング | ![]() |
②運搬・搬送
倉庫内や工場内での物品の移動作業です。効率的な動線設計と適切な搬送機器の選択により、作業時間の短縮と省人化を実現します。自動化された搬送システムの導入により、24時間稼働も可能になります。
■無人搬送車(AGV・AMR) 自動で経路を走行し、物品を搬送する機器・ロボットです。AGV(無人搬送車)はガイドによって定められた経路を走行し、AMR(自律移動ロボット)は周囲の環境を認識して最適な経路を自律的に選択し、走行します。AGVとAMRの違いについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください(「AGVとAMRの違いや特徴を徹底解説!搬送ロボットの種類とは」)。 | ![]() |
■天井走行車 天井のレールを走行して物品を搬送する機器です。床面を占有せず、効率的な空間活用が可能です。 | ![]() |
③梱包
商品の保護と配送効率向上のための包装作業です。商品特性や配送条件に応じた適切な梱包材と梱包方法の選択が重要です。箱詰めラインでは、「自動製函機 → 自動箱詰め機 → 自動封函機(上部封)」というように一連の流れで無人梱包ラインを構築することで、作業の標準化と効率化を図ることができます。
■自動製函機 段ボールケースを自動で組み立てる機器です。具体的には、平らに折りたたまれた段ボールを取り出して成形し、底面にテープや糊で封をして排出します。 | ![]() |
■自動封函機(封緘機・自動梱包機) 段ボール箱のフタを閉じてテープなどで自動的に封をする機器です。上下テープ貼りや上面のみの封函など、様々な封函方式のものがあります。封函した後にパレタイザを使用して自動積み付けをすることで、無人化ラインの構築が可能です。 | ![]() |
■エアー緩衝材製造機 商品保護用の緩衝材を製造する機器です。必要な分だけカットして出力可能なため、緩衝材の保管スペースの削減につながります。 | ![]() |
■DWS(Dimensioning、Weighing、Scanningシステム) 商品の寸法、重量を自動計測したり、バーコード情報を自動で読み取ったりするシステムです。主に宅配業者の仕分けセンターや通販倉庫、製造業の出荷ライン、国際物流で使用されています。このシステムを導入することで、自動で正確な計測ができ、スピードと精度の向上が見込まれます。 |
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④仕分け・ピッキング
注文に応じて商品を選び出し、仕分けする作業です。多品種少量配送の需要増加に伴い、作業の複雑化が進んでいます。デジタル技術を活用したシステムの導入により、作業精度の向上と効率化を図ることができます。
■コンベヤシステム 物品を自動で搬送するベルトコンベヤやローラーコンベヤです。直線、曲線、上下搬送など、様々な搬送ニーズに対応します。 | ![]() |
■ソーター(自動仕分機) 荷物や商品を自動で宛先やカテゴリ別に仕分けする機器です。バーコードやRFID*などの情報に基づき、高速で正確な仕分けをすることができます。通販・EC物流や宅配会社の仕分けセンター、製造業、アパレル倉庫などで導入されています。 *RFID・・・「Radio Frequency Identification(無線周波数識別)」の略で、電波を使って「タグに記録された情報」を非接触で読み書きする技術のことです。 | ![]() |
■オートラベラ 商品や梱包材に自動でラベルを貼付する装置です。人手よりも速く、正確に貼付することができ、製造業・物流・食品など幅広い現場で活用されています。 | ![]() |
■デジタルピッキングシステム デジタル表示やハンディターミナルを使用して、作業者が商品を正しく・迅速にピッキングできるように支援するシステムです。棚やボックスについているLEDランプが点灯したり、音声ガイダンスによる指示があったりと、方法はさまざまで、作業の正確性向上と効率化を実現します。 | ![]() |
物流プロセスにおけるマテハンの役割
マテハンは物流における作業品質と効率性を左右する重要な要素です。適切なマテハン機器の導入により、物流プロセス全体の最適化に貢献します。
マテハン機器の導入メリット
マテハン機器を導入することで、以下のような具体的なメリットが得られます。
①作業効率の向上:自動化による処理能力の向上と作業時間の短縮
マテハン機器の導入により、人手では困難な高速処理が可能になります。例えば、自動倉庫システムでは、商品のピッキング時間が従来の手作業と比較して短縮されたり、コンベヤシステムの導入により、物流センター内の移動時間が大幅に短縮され、作業者は他の業務に集中できるようになります。さらに、24時間稼働が可能なため、夜間や休日も含めた連続的な生産・物流活動が実現します。
②人件費の削減:省人化による人件費の抑制
自動化により、同じ作業量に対して必要な人員が削減されます。例えば、株式会社サラダコスモでは、パレタイザの導入によりパレット積み作業に必要な人員を4名から2名に削減できたケースがあります。
また、AGV(無人搬送車)やAMR(自律移動ロボット)の導入により、工場内の工程間搬送を効率化した事例も存在します。例えば株式会社明治では、AMRを3台導入することで年間経費を920万円削減しました。人手不足が深刻化する現代において、こうしたマテハン機器の導入は、採用コストや教育コストの削減にもつながります。(AGV・AMRについて詳しく知りたい方はこちら▶AGVとAMRの違いや特徴を徹底解説!搬送ロボットの種類とは)
(引用元:https://www.icom-giken.com/case/966/、https://www.fa.omron.co.jp/product/special/library/robotics/warehouse-robot/)
③品質の安定化:機械による正確な作業の実現
人の作業では避けられないミスや個人差による品質のバラつきを、マテハン機器の導入で大幅に低減できます。例えば、株式会社富士達はデジタルピッキングシステムを導入したことで、商品の取り違えミスを減らし、人員を10人→6人に削減することができました。さらに、作業が簡易化されたことで、採用や新人教育の負担も減ったそうです。
他にも、規格外品の自動検知システムの導入により、品質管理の精度が向上し、返品率やクレーム率の低下につながるなど、適切なマテハン機器を導入することで、様々なメリットを受けられる可能性があります。
(引用元:https://www.fujielectric.co.jp/products/logistics/solution_detail/logistics_case04.html)
④労働環境の改善:作業者の身体的負担の軽減
重量物の持ち上げや繰り返しの動作など、作業者の身体に負担がかかる作業を機械化することで、腰痛や筋肉疲労などの職業病リスクを低減できます。また、極端な温度環境(冷凍倉庫など)での作業時間を短縮することで、作業者の健康維持と快適性向上が図れます。これにより従業員の満足度向上や定着率の改善にもつながります。
⑤安全性の向上:危険作業の機械化による事故リスクの低減
高所作業やフォークリフト操作などの危険を伴う作業を自動化することで、労働災害のリスクを大幅に低減できます。また、安全センサーやAI画像認識技術を活用した衝突防止システムにより、作業現場での人と機械の接触事故リスクを最小化できます。これにより労災保険料の削減や、事故による操業停止リスクの低減という副次的な効果も期待できます。
業界別!マテハン機器の活用例
各業界特有のニーズに応じて、様々なマテハン機器が活用されています。業界別に使用されているマテハン機器について紹介します。
食品業界(株式会社釜屋/レトルト食品工場)
株式会社釜屋では、レトルト製品製造工程内の箱積工程にパレタイズロボットを導入しました。従来は6~12kgの箱を170cm積み上げる作業があり、女性作業員が重労働をしなければなりませんでした。しかし、パレタイズロボットを導入し、出荷商品のパレット積み込み作業を自動化したことで、作業者の人数も10人→8人へ削減することができ、作業負担の軽減と生産性の向上を実現しました。
(引用元:https://robo-navi.com/webroot/document/2018RobotHandBook.pdf)
アパレル業界(株式会社ZOZO/アパレル通販・小売)
ファッションEC「ZOZOTOWN」の運営等を行っている株式会社ZOZOは、将来的な流通量の増加を見据え、2023年11月に新たな物流拠点の本格稼働を開始しました。既存拠点では入荷・入庫作業を人が行っており、作業時間がかかること、作業者へ身体的負担がかかることが課題としてありました。また、一部のオペレーションが属人化していたこともあり、課題解決のためにAGVを導入しました。AGV導入後は、搬送作業が自動化されたことで作業者の負担が軽減し、労働環境の改善につながりました。また、属人化されていた作業も解消されたり、ハンドパレットの操作ミスによる衝突や搬送中の荷物の落下などによる怪我のリスクも低減したりなど、さまざまなメリットが生まれました。
(引用元:https://logi.toyota-lf.com/case/case045/)
自動車部品業界(トヨタモビリティパーツ株式会社 茨城支社/自動車・輸送機器)
レクサスブランドの部品など、各種自動車関連商品の販売等を行っているトヨタモビリティパーツ株式会社 茨城支社では、商品の仕分け作業に伴う作業負担、仕分けミスや作業時間・正確性のバラつきに課題を持っていました。そこで、仕分け作業を自動化するために立体型ソーティングロボットシステムを導入することで、各課題を改善できた他、1名の人員削減と約160分/日の作業時間の削減、約40%の省スペース化を実現しました。
(引用元:https://logi.toyota-lf.com/case/case043/)
EC業界(株式会社大創産業(DAISO)/日用品卸売・小売)
100円ショップ「ダイソー」のチェーン展開やオリジナル商品の開発を行っている株式会社大創産業は、出荷量増大に対応するため、2023年7月に新たに地域配送センターを立ち上げました。その際、「省人化によるROIの創出」など4つのコンセプトを掲げ、最新のマテハン機器を組み合わせて導入することで、高効率なオペレーションと省人化を実現しました。
(引用元:https://logi.toyota-lf.com/case/case036/)
まとめ
マテハン機器は物流施設の省人化、効率化に不可欠な要素となっています。適切な機器の選択と導入により、作業効率の向上、品質の安定化、労働環境の改善など、様々なメリットを得ることができます。また、IoTやAI技術の発展により、マテハン機器の機能も進化を続けています。物流施設の特性や要件を十分に検討し、最適なマテハン機器を選択・導入することで、物流プロセス全体の最適化を実現することができます。
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