物流コストの増加は、多くの企業が直面する課題であり、特に製造業や小売業ではその影響が大きいことが課題となっています。物流コストが適切に管理されないと、企業の利益を圧迫し、競争力の低下にもつながります。本記事では、物流コストの増加原因を探り、それに対する効果的な解決方法をお伝えしていきます。
物流コストとは？
物流コストとは、商品やサービスを消費者の元に届けるためにかかるすべての費用を指します。企業にとって、物流コストの最適化は重要な課題であり、適切な管理と削減策を講じることで、利益の最大化に繋げることができます。
物流コストの主な内訳
物流コストは多岐にわたる要素で構成されており、各項目のコストを適切に把握することが必要となってきます。以下の項目が物流コストに含まれます。
■運送費
商品を目的地まで運ぶために必要な費用です。運送費には、燃料費、車両の維持費、ドライバーの人件費、通行料金、運送業者への支払額などが含まれます。運送費は、物流コスト全体において大きな割合を占めます。
■管理費（人件費）
倉庫作業員やピッキングスタッフ、配送ドライバーといった現場スタッフに支払う費用です。これに加えて物流システムの運用管理者や品質管理担当者などの間接人員の人件費も含まれます。また、スタッフの教育研修費、安全管理に関わる費用、労災保険や社会保険料なども管理費として計上されます。
■保管費
商品を一時的に保管するための費用です。保管費には、倉庫の賃貸料、管理費、在庫管理システムの導入・運用費、商品保管に必要なスペースを確保するための費用などが含まれます。
■荷役費
商品の積み下ろしや仕分け作業にかかる費用です。これには作業員の人件費や設備費が含まれます。荷役作業が非効率的であると、作業時間が長くなり、コストが増加する原因となります。
■包装費（梱包費）
商品を輸送する際に必要な梱包材の購入費や、梱包作業にかかる人件費が含まれます。梱包費は、商品の種類や数量に応じて大きく変動するため、効率的な梱包方法を確立することがコスト削減につながります。
■システム費
物流業務を支えるITシステムにかかる費用です。これは、在庫管理システムや輸送管理システム（TMS）などの導入・運用費用が該当します。システム化による業務効率化は、長期的にコスト削減につながります。
■返品・再配達費用
商品が届かなかった場合や返品された商品を再配送するためにかかる費用です。再配達や返品処理のための手間と費用は、物流コストを増加させる原因の一つです。
そもそも物流コストが増加する原因とは？
物流コストが増加する原因は以下4つがあげられます。
人手不足と労働力問題
物流業界は人手不足や倉庫内での長時間労働などが大きな課題になっています。高齢化が進んでいることや若い世代の採用が難しくなっているため、賃金を引き上げをしていることから物流コスト全体が押しあげられています。
燃料費の高騰
燃料費の変動は、物流コストに直接的な影響を与えます。特に、長距離輸送においては燃料費がコストの大部分を占めるため、燃料費の高騰は物流企業にとって大きな負担となります。加えて、燃料費の上昇は、運送業者が料金を引き上げる原因となり、最終的には企業の物流コストが増加します。
インターネット通販の拡大と個別配送
インターネット通販の成長により、個別配送の需要が増加しています。この個別配送は、一度に多くの商品を配送するのに比べ、効率的ではなく配送コストを押し上げる原因となります。特に、ラストワンマイルの配送には時間とコストがかかっています。
サプライチェーンの複雑化
グローバル化により、サプライチェーンはますます複雑化しています。多国籍企業が複数の国や地域から商品を調達するようになり、商品の流れが複雑になっています。この複雑化により、物流全体の効率が低下し、コストが増加しています。
物流コスト削減のための解決策とは？
物流コストを削減するためには、さまざまな観点から改善を進める必要があります。
輸送ルートと配送方法の最適化
最適な輸送ルートを選定することで、無駄な距離を削減し、燃料費やドライバーの時間を節約できます。特に、リアルタイムでの交通情報を活用し最適な配送ルートを決定することが重要です。そこで輸送管理システム（TMS）を導入することで、効率的な配送計画を立てることができ物流コストを削減することができます。
倉庫管理の効率化
倉庫内での効率化を進めるために、倉庫管理システム（WMS）の導入を検討しましょう。WMSを活用することで、商品の入庫・出庫・在庫管理がリアルタイムで把握でき、保管スペースを最適化することができます。
共同配送の活用
複数の企業が協力して共同配送を行うことで、輸送コストを分担できます。特に、配送先が近い企業同士での共同配送は、輸送効率が高く、コスト削減につながります。共同配送を実現するためには、適切な配送業者の選定と協力体制の構築が重要です。
自動化とロボティクスの導入
倉庫内作業を自動化することで、人的リソースを削減し、作業効率を向上させることができます。例えば、AGV・AMRによる搬送の自動化やロボットによるピッキング作業は、物流コスト削減に大きく貢献します。さらに、AI技術を活用した需要予測やルートの最適化も、長期的に物流コスト削減することができます。
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サードパーティ物流（3PL*）の活用
自社で物流業務を行うのではなく、専門の物流会社に委託することでコスト削減を図る手法です。3PLを活用することで、倉庫賃料や人件費などの固定費を変動費化でき、繁忙期と閑散期の波動に柔軟に対応できます。また、物流のプロフェッショナルが持つノウハウやシステムを活用することで、作業効率の向上や配送品質の安定化も期待できます。
*3PL：荷主企業に代わって、物流戦略の企画立案や物流システムの構築を提案し、包括的に物流業務を受託・実行するサービスのこと
倉庫にかかる固定費を見直す
倉庫運営における賃料、光熱費、設備維持費などの固定費を定期的に見直すことが重要です。在庫量に対して倉庫面積が過大になっていないか、レイアウトの最適化により保管効率を向上させられないかを検証します。また、複数拠点の統廃合や立地の見直し、省エネ設備の導入なども有効な削減策となります。
梱包材の見直し
商品に適した梱包材の選定により、材料費と配送コストの両方を削減できます。過剰な梱包を避け、商品サイズに最適化された包装資材を使用することで、配送時の容積効率が向上します。また、環境に配慮した素材への変更や、リサイクル可能な梱包材の導入は、企業イメージの向上にもつながります。
コスト削減を見直す際の注意点
解決策をご紹介しましたが、やみくもなコストカットは逆効果になる可能性もあります。失敗しないためにも、以下のポイントに注意しながら、効果的な施策を進めることがとても重要になってきます。
本質的な価値を損なわない
コストを削減するあまり、サービス品質や納期、顧客満足度が低下してはよくありません。たとえば、ドライバーの数を減らすことで配送遅延が発生すれば、クレームやリピート率の低下につながる可能性があるため、人件費削減する場合は注意しなければなりません。
短期的な効果だけにとらわれない
一時的なコスト削減が、将来的な再投資やトラブルによる追加コストを生むケースもあります。たとえば、倉庫メンテナンス費を削減した結果、機器の故障で業務が停止してしまう状況も考えられます。
削減効果の検証と定期的な見直し
導入した施策の効果を定期的に見直し、「本当にコスト削減につながっているか」「別の方法の方が効果的ではないか」といった見直しを行うことが必要です。
その時の状況によって見直さなければならないポイントは変化していくため効果検証は継続的に行なっていきましょう。
まとめ
物流コストの削減は、企業の競争力を維持するために重要な施策です。本記事でもお伝えしたように物流コストの増加原因を把握し、最適化するためにさまざまな方法を導入することが求められます。自社にあったアプローチを実践し、コスト削減を目指していきましょう。
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