印刷物の品質検査を行う場合、良品の画像と重ね合わせて差分をとることで欠陥部分を抽出するという画像差分の手法が一般的によく用いられます。しかしこの方法では、検査画像が良品の画像と全く同じでなければ過検出してしまうという問題点があります。文字の太り細りや微妙な位置関係のずれなど、良品とは多少異なるけれども良品としたいという場合、HALCONでは、ある程度の許容を持たせた良品モデルを作成して差分に使用することで対応することができます。この方法をバリエーションモデルと呼びます。ここでは、バリエーションモデルを用いた印刷物の品質検査の例をご紹介します。
初めに、位置決め用のモデルを作成します。左図はパターンマッチング用のモデルを登録する画像です。
読み込んだ画像に対して2値化処理、ブロブ解析などを用いることで、解析する画像の領域を絞り込みます。
絞り込まれた画像からモデルを登録します。左図では、モデルに登録したエッジを赤線で表示しています。
次に、良品のサンプルを用いてバリエーションモデル(ある程度の許容範囲を持った良品)を生成します。読み込まれた複数枚の画像をトレーニングし、どのくらいの変動まで許容するかという情報をモデルとして登録します。
トレーニングで使用した画像を基に、参照画像(平均画像)を作成します。この参照画像は、良品サンプルの平均輝度値を持つ画像になります。
また同時に、ばらつき画像(分散画像)も生成されます。左図のばらつき画像中の白い線は、太い所ほど良品サンプルのばらつきが大きい箇所を表しています。
これでバリエーションモデルを用いた検査を行う準備ができました。
作成したバリエーションモデルを用いて検査を行います。
読み込んだ画像に対してマッチングを行い、参照画像と同じ位置に検査画像を移動させます。その後、バリエーションモデルと比較することで、欠陥部分のみを抽出します。左の画像は、それぞれが上下左右に多少印刷がずれていますが、トレーニングした範囲内の変動に収まっているため良品として判定されています。
図のようにバリエーションモデルの良品の幅を超えて印刷されている対象に関しては、欠陥部分が抽出され、不良品として判定されます。
欠陥画像として判定された画像の一例を拡大して示します。良品サンプルの中にこのような'C'の上部がかすれた画像が含まれていないため、この画像は不良と判定されました。
この画像も良品としたい場合は、バリエーションモデルを作成する際に良品サンプルに追加することで実現できます。
また、多少の許容範囲をもったバリエーションモデルを用いて検査を行っていますが、左図のように小さな欠陥部分であっても、良品サンプルに存在しない欠陥のパターンであれば見落とすことなく欠陥として抽出することができます。