
産業用カメラを使用した外観検査・寸法測定・画像処理システムでは、「カメラの画素数」ばかり注目されがちですが、実際にはレンズ選定が検査性能を左右するケースが非常に多くあります。
実際のご相談でも、
- 「高画素カメラに変更したのに欠陥が見えない」
- 「寸法測定の数値が安定しない」
- 「画像の周辺だけボケる」
- 「AI検査の精度が出ない」
といった課題の原因が、カメラではなくレンズ側にあるケースは少なくありません。
特に近年は、2.5µmクラスの細かい画素サイズや500万画素〜2500万画素クラスの高解像度カメラが普及しており、従来以上にレンズ性能が重要になっています。
本記事では、産業用レンズ(FAレンズ)の基本から、現場で実際に多い課題・選定ポイントまで、実務目線で解説します。
産業用レンズとは?
産業用レンズとは、Factory Automation(工場自動化)用途向けに設計された産業用カメラレンズです。
一般的な民生用カメラレンズと比較して、
- 歪み(ディストーション)が少ない
- 再現性が高い
- 長時間運用に強い
といった特徴があります。
特に寸法測定や高精細検査では、レンズ性能がそのまま検査精度に直結します。
弊社の取り扱いレンズ一覧は、下記よりダウンロードしてご確認いただけます。
レンズ選定で最も重要なのは「視野」
レンズ選定時によくあるのが、「ワークサイズからレンズを決めたい」という考え方ですが、実際に重要なのは「必要視野(FOV)」です。
例えばワークサイズが100mmでも、
- 位置ズレ吸収
- 搬送ばらつき
- マージン確保
現場では、「ワークぴったりで設計した結果、実機で一部が画角から外れた」というトラブルも少なくありません。
そのため、まずは
- 実際にどこまで映したいのか
- どの程度の余裕を持たせるのか
を整理し、「必要視野」を決めることが重要です。
また、視野が広くなるほど、1pixelあたりの分解能は低下します。
そのため、
- 必要視野
- 検出したい最小サイズ
から、必要なカメラ画素数を決定していきます。
その上で最後に、
- WD(撮像距離)
- 設置スペース
などの条件に合わせて、適切な焦点距離のレンズを選定します。
焦点距離とは?
焦点距離(mm)は、「どれくらい広く・大きく見えるか」を決める要素です。
焦点距離が短い場合
- 広範囲を撮影可能
- WDを短くできる
- 歪みが増えやすい
焦点距離が長い場合
- 狭い範囲を拡大可能
- 低歪みになりやすい
- WDが長くなる
一般的には、
| 焦点距離 | 主な用途 |
|---|---|
| 6〜12mm | 広範囲の視野検査 |
| 16〜25mm | 標準的な検査用途 |
| 35mm以上 | 高倍率を要する検査・寸法測定 |
で使用されるケースが多くあります。
高画素化で増えている「レンズ性能不足」
近年の検査装置では、500万画素以上のカメラ採用が増えています。
しかし現場では、「カメラだけ高画素化して、レンズは既存流用」というケースも多く、結果として解像不足が発生することがあります。
例えば、
- カメラ画素サイズ:2.5µm
- レンズ対応Pixel Pitch:3.5µm
の場合、センサー性能を十分に引き出せない可能性があります。
実際に、
- エッジが甘い
- ボケたように見える
- 微細欠陥が見えない
- AI特徴量が安定しない
といった問題につながるケースがあります。
そのため最近では、
- レンズ対応Pixel Pitch
- MTF性能
- 周辺解像性能
まで確認することが重要になっています。
レンズの「歪み(ディストーション)」とは?
歪みとは、本来まっすぐなものが曲がって見える現象です。
特に短焦点・広角レンズで発生しやすく、寸法測定用途では注意が必要です。
実際によくあるケース
例えば、
- WD制約で短焦点レンズを採用
- 広視野を1台で撮像
- 周辺部で寸法誤差発生
というケースがあります。
このような場合、
- 焦点距離変更
- 複数台構成にする
- 低ディストーションレンズ採用
- テレセントリックレンズ化
などで改善することがあります。
テレセントリックレンズとは?
通常レンズでは、ワーク高さが変わると見かけサイズも変化します。
一方、テレセントリックレンズでは、視差を抑えることで寸法変化を小さくできます。
そのため、
- 寸法測定
- コネクタ検査
- 半導体
- 電子部品
- 精密位置決め
などで広く使用されています。
ただし、
| 利点 | 欠点 |
|---|---|
| 低歪曲 | 高価格 |
| 高精度 | 大型サイズ |
| 寸法計測精度の安定性 | 照明の制約あり |
といった特徴もあるため、用途に応じた選定が重要です。
被写界深度(DOF)にも注意
現場で意外と多いのが、「中央だけ合焦して周辺がボケる」という問題です。
また、
- ワーク高さばらつき
- 斜め配置
- 凹凸形状
がある場合、被写界深度(DOF)が不足するケースがあります。

一般的には、
- F値を上げる
- 撮像倍率を下げる
- 必要分解能を見直す
などで改善できる場合があります。
特に重要なのは「倍率」で、同じ視野・同じ分解能条件では、焦点距離だけ変更してもDOFは本質的には大きく変わりません。
ただし、絞りすぎると回折の影響で逆に解像度低下することもあるため注意が必要です。
一方で、
- 視野を広げる
- 必要分解能を緩和する
などにより撮像倍率を下げられる場合は、DOFを確保しやすくなるケースがあります。
現場で多いレンズ選定ミス
① 画素数だけでカメラを決める
→ レンズ性能不足
② WDだけでレンズを決定
→ 視野不足・歪み発生
③ 1台で広視野を無理に撮影
→ 周辺解像低下
④ テレセンを使えば万能と思う
→ コスト・サイズ増加
⑤ 照明条件を後回しにする
→ 本来性能が出ない
レンズ選定時に必要な情報
実際のお問い合わせ時には、以下情報があると選定精度が大きく向上します。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 視野 | 200mm × 150mm |
| 作動距離 (WD) | 300mm |
| 最小検出寸法 | 0.1mm |
| カメラ解像度 | 500万画素 |
| センサーサイズ | 2/3型 |
| 適用用途 | 寸法測定、外観検査 |
| 搬送速度 (Conveyance Speed) | 5m/min |
特に「最小検出サイズ」は非常に重要で、必要分解能計算の基準になります。
まとめ
産業用レンズ選定では、
- 視野
- WD
- 焦点距離
- 歪み
- 解像性能
- 被写界深度
を総合的に考える必要があります。
特に近年は高画素化が進んでいるため、「カメラ性能に対してレンズ性能が不足する」ケースも増えています。
そのため、仕様表だけでなく、
- 実際の撮像条件
- 照明条件
- ワーク高さ
- 必要検査精度
まで含めて検討することが重要です。
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