マシンビジョンの世界において、ハイパースペクトルカメラを利用することによりどのような事ができるのかご紹介します。
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近赤外線のハイパースペクトルカメラ
多くの物質は近赤外領域において、異なる波長で光を吸収する特徴を持っています。つまり、近赤外の領域で光の吸収特性を観察すると、その物質を特定し、判別することができます。以下に物質特定を利用した事例をご紹介します。
選別機
米、麦、豆、茶、といった粒状の物質に混入する異物を取り除く装置があり、現在はどれも前述の通り3バンドRGBカメラで画像処理が行われています。しかし、色が似たようなものを選別するには3バンドのカラー情報では不十分であり、まさにハイパースペクトル情報が有効です。その一例として、穀物、レーズン、プラスチックの選別をご紹介します。特にプラスチックについては、リサイクルのために裁断された後に異物を取り除いたり、異なる成分のプラスチックを仕分けることにも応用ができます。
図3:穀物に混入した同色の異物の検出 (画像提供:Perception Park)
図4:レーズンと異物、茎の検出 (画像提供:Perception Park)
図5:裁断されたプラスチックの選別 (画像提供:Perception Park)
食肉に関してもスペクトル情報による仕分けは有効です。以下の例では、光の吸収特性の差から肉、脂身、骨の部分を識別しています。
図6:食肉における肉、脂身、骨の識別(画像提供:Perception Park)
リサイクル
選別するのは小さなものとは限りません。廃棄物処理の世界では、木材や金属、プラスチック、布、石、段ボールといった素材の種類を認識して選別する必要があります。下記の例では、ハイパースペクトルカメラを用いて物体の材質を識別し、さらに3次元カメラでその物体の位置姿勢を認識して、そこへロボットを移動させてピッキングすることにより該当するボックスへと分別します。
図7:分別システムの例(画像提供:ゼンロボティクス社)
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可視光でのハイパースペクトルカメラ
可視光でのスペクトル解析の事例を紹介します。可視光領域では物質の同定は向いていませが、厳密な色味の検査には適しています。
ディスプレイ検査
スマートフォンや自動車用ディスプレイの色彩性能を確認するために、赤や青といった決められた色を表示し、それをハイパースペクトルカメラで撮影することで各波長領域を厳密に計測することができます。これまでの検査では色差計による検査が行われてきましたが、ディスプレイを点で計測するため検査に対する信頼性、計測ヘッドの搬送による計測時間の増大などが問題でした。
ハイパースペクトルカメラを利用することで、面で計測を行うことによる検査の信頼性向上、計測ヘッド搬送時間の短縮による計測時間の短縮の効果が得られます。合わせて、色の検査だけでなく、輝度計測(cd/m^2)も同時に行うことが可能になります。
図8:ディスプレイ検査の概略図(左図Wikipediaより引用)
ハイパースペクトルカメラのマシンビジョンにおける有効性についてご紹介しました。次回は、マシンビジョンに長年携わるリンクスがなぜSpecim社製ハイパースペクトルカメラFX10/17を提案するのか、その理由を実際の生産現場で求められる仕様と共に解説いたします。
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