GigE Vision規格では、データ伝送の信頼性を向上させるため、パケットロスが発生した場合であっても自動的に再送要求を出しデータを復帰する仕組みが実装されています。これにより、データ伝送に負荷がかかりパケットロスが発生した場合でも自動的に復帰し、画像取りこぼしを防ぐことが可能です。
このような再送機能は、伝送の安定性を保証するための保険として実装されている機能であり、スイッチングハブを用いた複数台取込でパケットの衝突が発生する場合など、負荷が瞬間的に高まるような特殊なケースにおいても伝送の安定性を確保するための機能です。ネットワークカードのLANポートにカメラを1対1で接続する場合においては、このようなパケットロスが発生することはごくまれであり、カメラやネットワークの伝送設定を的確に行うことによりパケットロス自体の発生をなくし、安定した取込を実現することができます。
GigE Vision規格のデータ伝送安定性を示すため、以下のような4台カメラ接続環境・設定において100万回の連続取込試験を実施しました。
|
【機器構成】
■PC
CPU: Core2Duo 2.26GHz
OS: WindowsXP Embedded sp3
RAM: 2GB
NIC: Intel 82574L Gigabit
■ソフトウエア
画像処理ライブラリ HALCON
Pylon 2.3.5 (Filter Driver使用)
■カメラ
BASLER acA1600-20gm 4台
【設定】
■カメラ設定
露光時間: 10,000usec
Packet Size: 9000
Inter Packet Delay: 15182
■ネットワーク設定
Jumbo Frame: 9014 Byte
受信バッファ: 2048 (MAX)
割り込み加減率: 最大
|
|
|
カメラの設定「Packet Size」と「Inter Packet
Delay」は、パケット伝送形態を設定し、CPU負荷に大きな影響を与えるパラメーターです。これらは取り込み速度が許す限り大きく設定することで、伝送負荷を抑え、CPU負荷を低減することができます。


ネットワークの設定では、「Jumbo Frame」を最大に設定し、受信可能なパケットサイズの上限を最大にします。この値は、カメラ設定「Packet
Size」よりも大きくする必要があります。
「受信バッファ」は、受信するパケットに対して用意するバッファ数を設定します。また「割り込み加減率」は、パケット受信時にCPUにかける割り込み率を設定でき、高く設定することで割り込み回数を減らし、CPU負荷を低減することが可能です。
【100万回連続取込テスト結果】
平均取り込み時間: 66.853msec
最大取り込み時間: 70.020msec
取り込み時間分散値: 0.0000327msec
|
標準偏差: 0.00572msec
パケットロス: 0
画像の一部欠落: なし
|
100万回の取り込みを行った際の、取り込みにかかる時間(ソフトトリガー入力からPC上で画像を取得するまで)を計測した結果を以下に示します。ほぼバラつきもなく、安定した取り込み時間を実現できています。

図1. 1,000,000 回 画像取込時間
上記の100万回取り込み平均時間に対するバラつきをヒストグラムにて図2に示します。横軸が平均取り込み時間との差、縦軸が取り込み回数を表しています。図より、非常に小さなバラつき時間内に抑えられていることが分かります。
図2 取込時間バラつきヒストグラム
上述した結果に見られるように、カメラとネットワークカードを直接接続する構成の場合、ネットワークの設定を的確に行うことにより、パケットロスを発生させることなく安定した取込を実現することが可能です。このことからも、CameraLinkなど他規格と比較しても、GigE Visionカメラの取込安定性は非常に高く、優れた規格コンセプトであることを認識することができます。
|