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   BASLER ace GigEカメラ耐環境・連続稼働性能

独自プラットフォーム開発により驚愕の低価格化を実現したBASLER aceカメラシリーズは、小型かつソフトウエア技術による多機能性を実現し、リリース以降幅広い分野への展開が進む製品です。一方で、小型であることから発熱の問題を心配される声もあり、また取り込みに専用ボードを使用しないGigE Vision規格の取り込み安定性への懸念から導入に足を踏み出せないというご意見を頂戴することもあります。そこで、本号ではこれら2つの懸念点を払拭すべく、BASLER aceカメラの『熱設計コンセプト』と『複数台連続取り込みの安定性』に焦点をしぼりご紹介します。
 

   aceプラットフォーム:熱設計コンセプト

上述したように、BASLER aceカメラは低コスト化を追求したプラットフォーム開発により、様々なアプリケーションに適用可能な 29x29x42mm の小型筐体を実現しています。小型な筐体は通常、筺体温度が熱くなりやすい点が懸念されがちですが、BASLER aceプラットフォームは筐体表面からの放熱効率を高める設計コンセプトとなっており、一般的なレンズ実装やシャーシへの設置により十分に発熱を抑えることができます。

BASLER aceカメラは筐体温度50度まで動作保証しており、この条件をクリアできる環境下で使用可能です。上記設計コンセプトと合わせて考えると、設置環境を工夫することで高い環境温度下においても筐体温度を抑え、保証範囲内で使用できることを意味します。

環境温度とカメラ筐体温度の関係は、下図のようにモデル化することで、カメラの消費電力やカメラ-環境間の熱抵抗を用いて算出することができます。

 


左図のモデル化から、『カメラ筐体と環境間の温度差』は、以下の式により算出されます。
 
T.case [K]  -  T.env [K]
      =  P [W]  x  R.th [K/W]

カメラの消費電力 P [W] はカメラモデルにより決まっており、aceカメラの場合は2.0〜3.6Wの範囲です。
カメラ筺体と環境間の熱抵抗 R.th [K/W] を抑える工夫により、環境温度への耐久性を追求することが可能な設計となっています。
  

BASLER社では、一般的なカメラマウント方法として以下の条件を想定しております。

  ■ カメラ筺体はシャーシに固定されている。
  ■ レンズ・ケーブルが取り付けられている。

この条件下では通常、カメラ筐体と環境温度の差は10℃程度に抑えられます(熱抵抗 R.th=3.5 K/W 以下)。設置の工夫により熱抵抗 R.th を下げることで放熱を促し、カメラ筐体と環境温度の差をさらに小さくすることが可能です。
  
以下に、設置環境例とその際の筐体-環境間の温度差について示します。

  使用カメラ: acA640-100gm(33万画素モノクロカメラ)
  電源供給: Power over Ethernet給電(最大消費電力 2.3W) 

 
例1:カメラ側面をシャーシに接する場合

 カメラ消費電力 P = 2.3 W
 熱抵抗 R.th = 2.3 K/W
   
 カメラ筐体と環境間の温度差: 
  2.3 x 2.3 = 5.29 度
 
 結果: 環境温度 約44.7度まで対応

 
   
 

 

例2:カメラ底面をシャーシに設置

   

 カメラ消費電力 P = 2.3 W、 熱抵抗 R.th = 2.1 K/W
 カメラ筐体と環境間の温度差: 2.3 x 2.1 = 4.83 度
 
 結果: 環境温度 約45.2度まで対応

  

上述のように、一般的なカメラ設置環境下であれば、小型筐体プラットフォーム・aceカメラは40度など高温環境下で問題なく使用できます。また、ヒートシンクやファンを実装するなど、上記例に示す以上の工夫により、環境温度への耐久性をさらに追求することも可能です。

 

 ■  ace GigEカメラ:複数台連続取り込み

GigE Vision規格では、データ伝送の信頼性を向上させるため、パケットロスが発生した場合であっても自動的に再送要求を出しデータを復帰する仕組みが実装されています。これにより、データ伝送に負荷がかかりパケットロスが発生した場合でも自動的に復帰し、画像取りこぼしを防ぐことが可能です。

このような再送機能は、伝送の安定性を保証するための保険として実装されている機能であり、スイッチングハブを用いた複数台取込でパケットの衝突が発生する場合など、負荷が瞬間的に高まるような特殊なケースにおいても伝送の安定性を確保するための機能です。ネットワークカードのLANポートにカメラを1対1で接続する場合においては、このようなパケットロスが発生することはごくまれであり、カメラやネットワークの伝送設定を的確に行うことによりパケットロス自体の発生をなくし、安定した取込を実現することができます。 

 

GigE Vision規格のデータ伝送安定性を示すため、以下のような4台カメラ接続環境・設定において100万回の連続取込試験を実施しました。 

 

【機器構成】
■PC
   CPU:   Core2Duo 2.26GHz
   OS:     WindowsXP Embedded sp3
   RAM:   2GB
   NIC:    Intel 82574L Gigabit
■ソフトウエア
   画像処理ライブラリ HALCON
   Pylon 2.3.5 (Filter Driver使用)
■カメラ
   BASLER acA1600-20gm 4台

【設定】
■カメラ設定
   露光時間:             10,000usec
   Packet Size:          9000
   Inter Packet Delay: 15182 
■ネットワーク設定
   Jumbo Frame:       9014 Byte
   受信バッファ:         2048 (MAX)
   割り込み加減率:    最大
   

カメラの設定「Packet Size」と「Inter Packet Delay」は、パケット伝送形態を設定し、CPU負荷に大きな影響を与えるパラメーターです。これらは取り込み速度が許す限り大きく設定することで、伝送負荷を抑え、CPU負荷を低減することができます。


 

ネットワークの設定では、「Jumbo Frame」を最大に設定し、受信可能なパケットサイズの上限を最大にします。この値は、カメラ設定「Packet Size」よりも大きくする必要があります。
「受信バッファ」は、受信するパケットに対して用意するバッファ数を設定します。また「割り込み加減率」は、パケット受信時にCPUにかける割り込み率を設定でき、高く設定することで割り込み回数を減らし、CPU負荷を低減することが可能です。

   

【100万回連続取込テスト結果】

平均取り込み時間: 66.853msec
最大取り込み時間: 70.020msec
取り込み時間分散値: 0.0000327msec

標準偏差: 0.00572msec
パケットロス: 0
画像の一部欠落: なし

 
100万回の取り込みを行った際の、取り込みにかかる時間(ソフトトリガー入力からPC上で画像を取得するまで)を計測した結果を以下に示します。ほぼバラつきもなく、安定した取り込み時間を実現できています。

 

図1.  1,000,000 回 画像取込時間

上記の100万回取り込み平均時間に対するバラつきをヒストグラムにて図2に示します。横軸が平均取り込み時間との差、縦軸が取り込み回数を表しています。図より、非常に小さなバラつき時間内に抑えられていることが分かります。

 

図2 取込時間バラつきヒストグラム 
 
 

上述した結果に見られるように、カメラとネットワークカードを直接接続する構成の場合、ネットワークの設定を的確に行うことにより、パケットロスを発生させることなく安定した取込を実現することが可能です。このことからも、CameraLinkなど他規格と比較しても、GigE Visionカメラの取込安定性は非常に高く、優れた規格コンセプトであることを認識することができます。
 


 

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