前号では、分類法の精度を決める重要な要素として’適切な特徴量の選定’を挙げました。適切な特徴量を使用しなければ、精度が低下してしまうケースが考えられますが、この’適切な特徴量の選定’により、分類法の敷居が高く感じられる方もいるかもしれません。そこで今回は様々なケースで汎用的に使用できる、極座標展開を応用した特徴量を紹介します。
極座標展開は、中心から周辺に向かう放射方向と円周に沿った接線方向を新たにX軸Y軸として変換する手法です。画像処理ではX軸Y軸に沿った処理を行うことが多いため重宝される機能ですが、分類法にも有効な手法です。
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図1.極座標展開の原理
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特徴量抽出の流れ
@. 欠陥領域の外接円の重心/半径を取得し、その情報を基に極座標展開を実行
A. @を縦方向に均等に4分割し、それぞれの区分の輝度値の平均/分散を取得
B. @に対して、横方向の微分画像を生成
C. Bを縦方向に均等に4分割し、それぞれの区分の輝度値の平均/分散を取得
D. @に対して、縦方向の微分画像を生成
E. Dを縦方向に均等に4分割し、それぞれの区分の輝度値の平均/分散を取得
F. ACEで取得した値を特徴量とし、トレーニングを実行
図2. 極座標展開を用いた特徴量抽出の処理の流れ
前号で紹介した例を再度取り上げて、各欠陥ごとの特徴をみてみましょう。
ピンホールのような円形状の一様な輝度値を持つ欠陥では、平均/分散とも低い値が得られます。一方、糸くずのような線状の欠陥では、平均値は背景と同じような値が得られ、分散も低めの傾向が得られます。異物のような形状が安定しない欠陥では、平均・分散ともにやや高めの値が得られる傾向にあります。
これらから、極座標展開を用いることで欠陥の形状の情報も取得したグレイ値の特徴量に含まれていることが分かります。
図3. 極座標展開を用いた特徴量の欠陥ごとの傾向
前号で、大きさが一定でない対象物には、大きさを定義してしまう特徴量を使用するべきではない点を解説しましたが、この手法では手順@にて、極座標展開に使用する半径を欠陥のサイズで正規化するか、それとも固定値を使用するかで同じ効果を得ることができます。固定値で極座標展開をする場合にはサイズの違いも重要な情報として扱われますが、欠陥の大きさで正規化した場合には大きさは意味を持たない情報として扱われます。
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