従来の産業用アナログカメラでは、その構成要素の大部分はハードウエアコンポーネントでした。しかし、GigEカメラを代表とするディジタルカメラでは、FPGAプログラムやドライバといったソフトウエアがコア技術を握るようになりました。いかにこれらのソフトウエアを上手く実装するかで、産業用カメラの品質と性能、コストを左右する時代となりました。BASLERはこれからもソフト技術の新しい基準を打ち立て続けます。
本シリーズ企画 BASLER ace 『ソフトの革命。』の第三回では、様々な画像特殊取込機能を実現するBASLER社のソフト技術についてご紹介します。
■ マルチショット機能
監視用途や半導体・電子部品などの高速検査アプリケーションにおいて、あるトリガータイミングに合わせて複数枚の画像を連写で最速取込みしたいという要求があります。この場合、通常では複数トリガーを最速タイミングに合わせて入力する必要があり、カメラのReady信号を受け取るタイミングでトリガー信号を入力するなど、ハード側を調整することが要求されていました。
BASLER GigEカメラの最新カメラ機能では、マルチショット機能を提供し、この問題を容易に解決することができます。ユーザは任意の取込枚数を指定するだけで、1回の取込開始トリガー入力により複数枚の画像をカメラの最高速度で取り込むことができます。
■ 付加データ: CHUNK機能
BASLER GigEカメラから出力される画像のデータには、撮影した画像データ(各ピクセルにおける輝度値情報)の他に、付加的な情報を追加して送信することができます。この付加的な情報をCHUNKデータと呼びます。aceカメラの場合、CHUNKデータとして以下の情報を各画像の中に含めることが可能です。
■ Imageタイプ(8bit、10bitなど)
■ AOIサイズ
■ ピクセルフォーマット
■ ダイナミックレンジ
■ タイムスタンプ
■ IOの状態(High / Low)
■ フレームカウンタ
■ トリガ入力カウンタ
■ CRCチェックサム
例えばフレームカウンタの場合、画像処理の過程で特定のトリガ入力信号に対応した画像を検索するような場合に活用できるなど、これらのCHUNKデータはユーザのシステム構築の自由度を高めます。
■ デバウンサー機能
トリガー信号入力タイミングに合わせて露光開始やストロボ発光信号をコントロールする機能は、ほぼ全てのカメラメーカーでサポートされています。しかし実際の運用上では、トリガー信号自体にノイズがのってしまうことや、信号立上り・立下り時のチャタリングが問題になるケースが数多く存在します。これにより予期しないタイミングで撮影が開始されてしまうため、チャタリング抑制などユーザ側にハードウエアの改善負荷が発生してしまいます。
BASLER社ではこのような場合を想定し、デバウンサー機能を提供しています。これにより、トリガー信号のパルス幅にしきい値を設定することができ、設定した時間以上のパルス幅をもつ信号にだけカメラを反応させることができます。
ノイズやチャタリングに頑強な安定した取込を実現する非常に有用な機能であり、すでに多くのユーザ様にご活用いただいています。
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安定取込を実現する デバウンサー機能 |
■ 自動ゲイン・露光調整機能
BASLERカメラには、ゲイン、露光時間を自動的に調整し、最適な値を設定する機能が実装されています。この機能を使用することで、刻々と変化する撮影環境においてもユーザーが期待する明るさの画像を取得することができます。
これらのパラメータは、設定した自動設定機能用AOI内におけるピクセルの輝度情報を元に、自動的に調整が行われます。この自動設定機能用AOIは、カメラの撮影範囲(AOI)とは別の領域として設定することが可能であるため、撮影範囲とは別の領域内の輝度情報を参照してゲインや露光時間の調整を行うことができます。
下図に自動調整機能に適用される参照領域の例を示します。
トリガー取り込みや露光調整といった基本機能に加え、近年では様々な特殊取込機能がメーカー独自のソフト技術によって追加され、今まで実現が難しかった多くの機能を容易に活用できるようになりつつあります。これによりアプリケーションの幅が広がり、安価かつ効率よく高機能システムを構築できるようになります。BASLER社のソフト技術は、上述したような数多くの特殊取込機能をすでに実現しており、今後も有用な機能をさらに追加する予定です。
次のシリーズ第四回では、最新の実装機能に加え、BASLER pylonにより近日導入予定である特殊機能をご紹介します。
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