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  GigE Vision の要素技術

シリーズ企画『BASLER技術白書』の第二回は、「GigE Visionの要素技術」と題して、GigE Visionの要素技術に関する技術白書を紹介します。この内容はより詳細な解説等を含んだ完全版から抜粋したものです。

【BASLER技術白書 公開予定】

■ (第一回) CMOSハイスピードラインスキャンカメラ:sprint
■ (第二回) GigE Visionの要素技術
■ GigE Vision - CPU負荷と画像取得待ち時間
■ BASLER pilotシリーズのタップバランス技術
■ 検査仕様を満たすために必要となるピクセル数
 

GigE Visionとは何か

  
GigE VisionはAutomated Imaging Association(AIA)によって定められた規格です。
BASLER社はAIAの主要メンバーの1社であり、マシンビジョンのアプリケーションに適した規格を定義することに貢献しています。
   

GigE Visionが選ばれる理由

  
GigE Visionは、産業・消費者の両市場に広く浸透しているイーサネット技術を基にしているため、必要なコンポーネントは安価に入手することが可能です。そのため、システムのトータルコストを削減することができます。

また、GigE Visionではリピーターやハブを介することなく、最大100mまでのケーブル長に対応することが可能です。これは大型の装置や、遠隔操作を必要とするアプリケーションにおいて非常に大きなメリットになります。

ギガビットイーサネット(1Gbit/s)の出現により、リアルタイムで非圧縮画像を高速転送するのに十分な帯域を確保することが可能となりました。 ギガビットイーサネットは将来的に10Gbit/sというさらに大きな帯域への拡張も見込まれています。
  

GigE Vision規格

 
GigE Vision規格はUDP/IPに基づき、マシンビジョンの要求を満たすように設計されたインターフェース規格です。GigE Vision規格は、大きく4つの定義から構成されています。

@デバイスを検知・列挙し、いかに有効なIPアドレスを取得するのかを定義
A検出したデバイスの設定や、安定した転送を保証するために使用されるGVCP(※後述)を定義
Bアプリケーションがデバイスからの情報を受け取るために使用されるGVSP(※後述)を定義
CIPアドレスやシリアル番号、製造情報などのデバイス自体の情報を記述するブートストラップレジスターを定義
  

GigE Visionはいかにして動作するか

 
TCP/IP構造とGigE Vision(UDP/IPベース)を比較するために、図1で示す”Open Systems Interconnection Reference Model” (OSIとも呼ばれる)を用います。

TCP/IPはホスト間の信頼性の高い情報伝達システムとして開発されました。ネットワークの過負荷を避け、自動的にロストデータを検出し、補正が行われます。TCP/IPプロトコルはWEBやEmailなどの用途において広く普及しましたが、マシンビジョンにおいては十分な活用は見られませんでした。

GigE Vision規格はUser Datagram Protocol (UDP)を基にしています。UDPではポートによりアプリケーション間のデータの伝送を可能にします。TCP/IPに比べて信頼性は劣りますが、パフォーマンスは向上し、特にマシンビジョンに求められる高速画像転送が可能となります。
  


図1.OSI Reference Model
   

 
UDPの信頼性の低さを補うために、GigE Visionには更に以下の2つのプロトコルが導入されています。
・GigE Vision Control Protocol (GVCP)
・GigE Vision Streaming Protocol (GVSP)

GVCPはUDPに依存したアプリケーション層プロトコルです。画像転送の信頼性を保証するためのメカニズムをUDPに付加します。さらに、カメラなどのデバイスの設定や制御通信路のインスタンス化を可能にします。制御通信路は2つのチャンネルに分かれ、チャンネル1はデバイスのレジスター読出/書込が可能で、チャンネル2はレジスターの読出のみ可能です。

GVSPはUDP転送層プロトコルに依存したアプリケーション層プロトコルです。GVSPはデバイスからの画像等のデータの受け渡しを可能にします。パケットは常にデバイスからアプリケーションへと転送されます。GVSPはGVCPを介した安定したパケット転送を保証するメカニズムを付加し、UDPの信頼性の低さのために必要とされるフロー制御を最小限に留めます。
  

GigE Vision対応カメラとPCの接続方法


GigE Vision対応カメラとPCの接続にはイーサネットケーブルが必要です。マシンビジョン用途であることを考慮して、BASLER社ではカテゴリー6以上のケーブルを使用することを推奨しています。ケーブルについてはシールドが重要で、電磁気干渉を避けるためにイーサネットケーブルの銅線が、適切に保護されている必要があります。また、ケーブル全体も、スクリーニングと呼ばれる編み込んだ金属によるシールドが施されているものが望ましいです。また、コネクターに関しては、ねじ機構を持ったものなど産業用途向けのものも入手可能です。
  
   

複数台のGigE Vision対応カメラを使用するアプリケーション


複数台のカメラを接続する際には、ハブやスイッチ、ルーターを使用します。ギガビットの転送速度で動作させるためには、ネットワーク上の全てのデバイスがギガビットイーサネットに対応している必要があります。高速イーサネット準拠のデバイスがあったとすると、ネットワーク全体の帯域も高速イーサネット帯域(100Mbit/s)で動作することになります。また、接続されている全てのデバイスで帯域を共有するため、複数台のカメラを使用する場合は、各カメラの最大フレームレートは接続する台数に応じて低下します。

デバイスはIPアドレスとサブネットマスクを持つ必要があります。ネットワーク上で適切にデータ転送を行うためには、全てのデバイスが同じサブネット上に存在し、固有のIPアドレスを持っていることが条件となります。

GigE Visionでは、異なる2つのデバイスに対して同じIPアドレスが割り当てられることを自動的に防ぐ仕組みをもっています。
   

GigE Visionカメラベース構成と他インターフェースベース構成との比較


・ GigE Vision vs Camera Link
これまでCameraLinkカメラでしか実現できなかったようなアプリケーションにおいても、「GigEカメラベースシステム」への置き換えが可能です。GigE Visionへ置き換えることによりメリットが得られます。GigE Visionでは、画像入力ボードを必要とせず、標準的なケーブルおよびネットワークカードを使用することができるという点において、IEEE 1394(FireWire)の利点を引き継いでいます。さらに、最先端の技術を搭載した、より費用対効果の高い高性能カメラの開発が可能です。GigEカメラはより使い勝手が良くなるように設計されており、設定や実装が容易になります。
  
・ GigE Vision vs アナログ
現在もアナログカメラはマシンビジョンの市場において最も大きなシェアを獲得しています。複数台のアナログカメラを搭載したシステムは、「GigEカメラベースシステム」への置き換えが可能で、かつ、コストを抑えることができます。
  
・ インターフェース比較(GigE Vision, IEEE 1394, Camera Link, アナログ)
インターフェースの比較を表1に示します。

 


 表1.インターフェース毎の技術的特徴の比較
 


マシンビジョン市場でのシェアを拡大しているBASLER社のGigE Vision対応カメラが皆様の装置への新たなソリューションとなれば幸いです。
  

 

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