■ 動的しきい値法を用いた外観検査

輝度ムラの発生した画像での欠陥検出

対象表面の反射や照明条件の影響で画像中に現れる輝度ムラは、外観検査を行う際によく問題となります。輝度ムラのある画像に対して、通常の固定しきい値処理で欠陥だけを検出することは非常に困難です。このような問題に対して、HALCONの特殊な2値化処理である動的しきい値法が極めて有効に働きます。動的しきい値法では、輝度ムラのある画像に対して局所的にしきい値を変動させるため、周囲と比較して特徴的な部分だけを抽出することが可能です。

動的しきい値法

右の図は動的しきい値法のイメージを表したものです。画像中のある1ラインに対して、横軸が画像座標、縦軸がその位置での輝度値を表しています。元画像の輝度値情報は波うった黒の実線で表されています。画像の端の方では輝度値が低く暗い画像になっていますが、中央付近は輝度値が高く明るい画像であることを表しています。この画像から局所的に突出した部分、つまり赤で示された箇所を抽出することは、通常の固定2値化処理では非常に困難です。


このような場合、HALCONでは、まず画像を平均化することでベースのコントラストを算出します。これは図中青で表した実線に対応します。元画像とこの平均画像の差分を取り、あるオフセット値を設けることで近傍の輝度と比べて突出して変化している興味の対象の領域のみを抽出することが可能となります。

    

画像の各要所においてダイナミックに閾値を設定するということから、動的しきい値法と呼ばれています。  

動的しきい値法適用例

上記理論を実際に適用した例をご紹介します。

  
画像()のように、金属平面上の傷を検出するアプリケーションを考えます。画面やや左に縦に大きく入った傷と、画面上部に横に入った傷が検出対象となります。このような金属平面の外観検査では、どうしても輝度ムラが存在してしまいます。今回の事例でも、場所によって明暗に差が存在していることが確認できます。

  

画像()は通常の固定しきい値処理を適用した結果になります。赤で示した領域が抽出された結果ですが、黒い大きな傷を抽出しようとすると、輝度ムラの影響で右側の暗い部分も抽出されてしまっているのが確認できます。反対に、右側の暗い部分を抽出しないようにしきい値を高く設定すると、今度はとりたい傷の部分が抽出できないという結果になってしまいます。

このような問題に対して、動的しきい値法を適用することで、輝度ムラに影響されず欠陥を検出することが可能です。
  
動的しきい値法を適用するためには、まず元画像に対して平均化処理を適用します(画像())。

  

平均化画像と元画像の差分を取り、局所的に暗い領域のみを抽出した結果を画像()に示します。

動的しきい値法により、輝度ムラによらず対象の傷の領域を含む欠陥候補領域を取得することができました。

 

ここまでくれば、領域に対してラベリング処理、形状特徴量解析を適用することで、容易に対象の傷領域のみを抽出することが可能です。
 
このように、通常の固定しきい値処理では抽出が難しい欠陥も、動的しきい値法を用いることで極めて容易に抽出することが可能です。

      

        

別の例としては、右の図のような球面の外観検査などが挙げられます。

通常、球面上にあるキズを検出しようとすると、照明を均等に当てることが困難なため、球面の外側までキズとして検出されてしまいます。

このような問題に対しても動的しきい値法を用いることで球面上の傷のみを抽出することが可能です。
 

動的しきい値法は、金属表面など様々な対象の外観検査や特殊な前処理機能として頻繁に用いられている機能です。通常の2値化では対象を抽出できないといった問題に対しては、まずこの動的しきい値法を適用してみてください。

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