ICチップ上のパッドとリードフレーム端子を接続する金属ワイヤーの検査

解析範囲の絞込み

HALCONの特出した機能の1つとして、解析範囲の絞込みが挙げられます。解析範囲を絞り込むことで、パターンマッチング、フィルタ、エッジ抽出などの後処理を限定的な範囲に対して行うことができます。これにより高速化が図れるだけでなく、複雑な処理を極めて簡易化することが可能です。
矩形で解析範囲を絞り込むことは当然ながら、HALCONの大きな特長は、前処理で得られた領域を利用して解析範囲を絞り込むことができる点にあります。例えば、2値化して得られた領域に対し、各種モフォロジー、ブロブ解析を行った結果、興味の対象となる範囲のみを領域オブジェクトとして抽出したとします。その領域オブジェクトに解析範囲を絞り込むことで、後処理を数段に簡易化することが可能となります。

金属ワイヤーの抽出

右図のように、ワイヤーボンディング後、金属ワイヤーが正しくICチップ上のパッドとリードフレーム端子を接続しているかどうかの検証を行いたいという事例があります。この事例における課題として、金属ワイヤーの背景が位置によって変化するため、金属ワイヤーと背景とのコントラストが位置によって大きく変化することが挙げられます。


 チップ画像

また 、複雑な背景を持っているため、単純にエッジ抽出を行うと、右図に示すようにワイヤー以外にも膨大な量のエッジが検出されてしまいます。この中からワイヤーのエッジだけを選出することがいかに大変か、容易に想像していただけると思います。

このような課題に対してHALCONを使った場合の処理手順を以下に紹介します。


エッジ検出処理適用結果

(i) 通常の2値化を用いて大まかにICチップを含む明領域を抽出します。(※以下、画像左部を表示)

(ii) 形状特徴量解析(ブロブ解析)や各種領域処理を用いてICチップの部分だけの領域を抽出します。

(iii) iiで得られたICチップの領域の位置・傾きから、相対的に、ICチップ上のボンディングのボールはんだ部分、リードフレーム端子上のボールはんだ部分をそれぞれ含んだ領域を生成します。

(iv) ここでHALCONの特長機能である解析範囲の絞込みを、で求めた領域に適応することでボールはんだが並んだ周辺領域のみの画像を得ることができます。

(v) ivで得られた画像に対して、ボールはんだ部分のみを、2値化処理および形状特徴量解析(ブロブ解析)によって抽出します。これにより、ワイヤー両端のはんだ位置の座標を大まかに取得することができます。

(vi) 次に、このワイヤー両端のはんだ位置から、ワイヤーが配置されているであろう範囲を想定して、人工的に矩形領域を作成します。ワイヤーボンダー設計者であれば、どの範囲にワイヤーがおさまるべきかは既知の情報です。

(vii) viで生成した矩形領域を1つずつ選択し、その矩形領域に対して解析範囲を絞り込みます。上図(vii)では上図(vi)の一番上の矩形領域での処理を表示しています。

@で直線的なエッジの抽出を行います。
Aにてワイヤーを形成するXLDのみを、XLDデータの形状特徴量解析により選出し、背景の影響でワイヤーのエッジが断片的に抽出されてしまっている部分を結合して1つのエッジとします。
Bにて、Aで抽出されたワイヤーのエッジにスムージング処理を施すことにより、ばらつきのある結合部分を含めて、最終的に柔軟にワイヤーのみのエッジを検出することができます。

(viii) viiの処理を繰り返すことで、 上図(viii)のように全てのワイヤーの検出が可能となります。

以上のように、(i)から(viii)の処理により、一見すると不可能に思われる複雑な背景のある中で、ボンディングされた金属ワイヤーのみを抽出することが可能となります。ワイヤーを正しく抽出できて初めて、屈曲率の計算や折れなどの検査を実現することができます。

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