Basler社は2005年にGigEカメラを発売して以来、産業用カメラ市場に向けて圧倒的なスケールメリットをベースに徹底的なボリューム戦略を展開しています。具体的な要素として、アナログからデジタル、つまりGigEカメラ更にはUSB3カメラへの展開、CCDセンサだけではなくCMOSセンサを標準カメラとして積極的に搭載し、今年からはボードカメラ、また周辺機器ではキーパーツであるレンズをBaslerブランドとして商品化したことが挙げられます。2014年世界市場での産業用カメラ年間出荷台数は、17万台を超えるものとなりました。
この戦略は快進撃と呼ぶにふさわしいものであり、今号では、その根底にあるBasler社の
総所有コストの最小化
という設計思想についてご紹介いたします。
一般的に総所有コストとは、初期導入コストだけでなく維持、管理などランニングコストを含むシステム費用の総額を指すものです。例えば、サーバーシステムを導入する場合、
そのコストは、商品価格自体とは別に、システムの維持や管理費用、更新費用などランニングコストも大きな存在となります。
商品自体の価格が安いためにA社を採用したが、初期の導入に開発工数を多く要したり、電力消費が多いために維持費が高くなったり、
更には周辺機器を追加で購入する必要があったりと、図1に示すように結局は総合的にコストが高くつくといったことはよくあることです。
同じことが、産業用カメラシステム(カメラ、ケーブル、画像入力ボード、レンズ、…)にも言えるのではないでしょうか?
産業用カメラシステムの場合も、システムとしての総所有コストを考える場合にはカメラの単体価格だけではなく、画像入力ボードなどの周辺機器や、ドライバソフトの安定性によるメンテナンス費用などを総合的に考慮する必要があります(図2)。例えば、図1のようにシステムAとBの総所有コストを比較した場合、Aの方が初期コストを抑えることができますが、総所有コスト最小化の考えで見た場合、消費電力(グラフの傾き)や定期的なメンテナンス費用(矢印)を加味すると、最終的なコストの差は逆転し、大きな差が出てきます。
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