昨年末に正式リリースした、Basler Time-of-Flightカメラ(以降、Basler ToFカメラ)は、そのユニークな機能や性能から大きな反響をいただいています。

本号では、今なぜ3次元デバイスが注目されるのか、Basler社がなぜToFカメラを市場へ投入したのか、その背景を踏まえ、機能特徴とその活用法についてご紹介いたします。

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画像処理市場において欠かせなくなった3次元デバイス

下図はマシンビジョン市場における、2次元デバイスと3次元デバイスの性能向上とコストの推移を示しています。

これまで、画像処理の市場では特に半導体業界や自動車、電気電子機器業界などのニーズと共に画像処理技術革新、低コスト化が進んできました。ただし、この多くは2次元画像によるものでした。
3次元デバイスへのニーズは元々多くあったものの、そのニーズを満たす十分なソフトウエア及びハードウエアの技術が確立されていなかったり、コスト要求が満たせなかったりといった要因でラインへの導入ハードルが高いものとされていました。
しかし、ここ数年でソフトウエア、ハードウエアの技術革新は進み、特にハードウエアの観点では、弊社取扱い製品heliotisのようなタクトの高速化及び低コスト化を実現するデバイスの登場によって市場ニーズとのギャップが埋まってきました。
これによりこれまで困難だった3次元データを活用したシステム実現の可能性が広がり、3次元画像処理技術はより注目される技術となっています。

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なぜBaslerは“Time-of-Flight”なのか

こうして進歩を続ける3次元画像処理技術ですが、3次元データの取得方法としてはステレオビジョン、縞投影法など、さまざまです。
下記の表は、それぞれの手法を仕様別に比較したものです。それぞれ長短所がありますが、特に“Time-of-Flight”は総合的に高い評価となっています。

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具体的には、ToF方式ではステレオビジョンのように複数台のカメラを用意する必要もなく(省スペース)、キャリブレーションも不要、3次元データはカメラ内部で算出してくれるため、CPUへの負荷も低い、といった特徴があります。
精度はcmレベルであるものの、微細な対象物でないロボットピッキングや従来の検査、計測といった分野ではなく、ToFのカメラの活用例には様々なものが挙げられます。例えば大型の搬送用ロボットにToFカメラを取り付ける事により、搬入や位置決め、検査などを生産工程の中で行ったり、公共インフラや病院で、人や物などの存在検出や侵入検出の為にToFカメラを用いたり、更には工場内搬送で活躍するAGV(AutoGuidedVehicle)やフォークリフトにも、死角を回避し貨物の衝突防止の目的でToFカメラが用いられています。

これらの情報から十分な市場があると判断し、Basler社として“Time-of-Flight”の手法を選択しています。


Basler ToFカメラのユニークな機能とその活用例

上述の通り、さまざまな分野での活用の可能性を秘めているToFカメラですが、Basler ToFカメラでは産業用途により便利な機能を備えています(LinX Express vol.261参照)。 本章ではそれぞれの特徴機能について、活用方法を例に挙げご紹介します。

①トリガー制御機能
Basler ToFカメラでは従来のaceシリーズなどと同様にソフト/外部トリガ取込機能が搭載されています。
例えば、物流倉庫における配送物の選別アプリケーションでは、左図に示す通り既存センサとの同期が可能となり、搬送系との連携が容易となります。

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②PTP機能
Basler ToFカメラはGigE Vision 2.0に準拠しており、同一ネットワーク内の複数カメラの撮像タイミングを同期することが可能です(フリーラン時)。
この機能は、GigE Vision 2.0対応の一部aceシリーズとの連携も可能で、Basler ToFカメラを計測または検査対象物の検知、及び体積計測用のセンサとして使用し、同時に撮像したaceシリーズでの2次元データにて欠陥検査やQRコードの読取などを実施することが可能です。異なるデバイスにも関わらず、外部トリガを利用せずともデータの紐づけが容易に行えます。

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③マルチチャンネル
一般的にTime of Flight方式のカメラは、各々の照明が互いに干渉するために複数台での同時利用が困難ですが、Basler ToFカメラでは、異なる光源のパルス幅や周期を設定することで誤認識を防ぐ機能が搭載されています。
例えば、スペース要因で複数台のToFカメラを近距離設置せざるを得ない場合や、1台の視野に収まらない対象物を複数台で撮像する場合に役立ちます。

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④新型SDK
これらの機能に加え、新登場のソフトウェアパッケージでは「空間フィルターと時間フィルターを改善し、動く物体の撮影がしやすくなりました。また以前のバージョンと比べて、フィルターの安定状態への移行がさらに速くなっています。
さらにアプリケーションの開発にVisual Basic .NETも使用可能となり、より操作性やアプリケーションの開発も容易になりました。


Basler ToFカメラのデモ機を「画像センシング展」で

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6月7日(水)~横浜パシフィコにて開催される「画像センシング展2017」にて、Basler ToFカメラを搭載したデモ機をご覧いただけます。
ユニークなBasler ToFカメラの機能を活かしたデモ機を準備しておりますので、この機会に是非お越しください。会場でお待ちしています。

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